2024年5月17日
  • 須恵町にある高校受験専門学習塾

カラオケを楽しむためには

大学時代には、カラオケボックスで夜を明かすということはありましたが、最近はめっきり行かなくなりました。カラオケボックスで非常に困るのは、本人は熱唱しているけれど、周りの人は誰一人としてその曲を知らないという状況です。本人だけはその曲が好きで舞い上がっていますが、周りはイマイチ盛り上がり方が分かりませんので、最終的には右から左に聞き流すことになります。また、自分の選んだ曲の1番は歌えるけれど2番になると分からなかったり、サビは歌えるけどそれ以外は分からなかったりすると、その場しのぎで「フフフ~」とハミングするすることがあるでしょう。すると、「歌えないんだったら入れるなよ!」という空気になり、ついにどうしようもなくなると自ら曲をストップすることとなるのです。

 

さて、なぜカラオケの話から始めたのか、それはこのカラオケでイマイチ盛り上がれない状況が、テストで点数が取れない状況と非常に似ていると思うからです。カラオケで知らない曲ばかりだと面白くないように、歌えない箇所があるとテンションが下がるように、勉強でも問題が自分の知識や能力の範囲を超えていた場合、全くもってやる気が生まれないものです。定期テストでも、模試でも、目に入ってきた試験問題が、自分の知識ではどうにもならないものだと分かった瞬間、得点を取ろうという意欲が一気に失われます。一度気持ちが落ちた状態から、何とかして解いてやろうというやる気を生みだすのはそう簡単なことではありません。試験の前半で分からない問題が数多くあると、後半に簡単に解ける問題があっても、集中力が切れ、雑な計算や記述で点を失う子が多いのはそのためです。最悪の場合、「どうせやってもできないし」「どうせ読んでも分からないし」と卑屈になって、中1や中2、あるいは受験直前に勉強を放棄することにもなりかねません。とりわけ近年の入試問題は、単純な一問一答形式の問題が少なくなり、問題文を丁寧に読まなければ解答できない問題や導入が長い問題、語句の内容を問う問題が多くなっています。簡単に言うと、面倒くさくなっているのです。今回はその辺を、社会の入試問題を使ってみていきます。まずは以下の問題をご覧ください。

 

「わが国の都市部の海岸では埋め立てが進んでいる。貴重な湿地としてラムサール条約に登録されている伊勢湾の藤前干潟では、かつて廃棄物処理用地として埋め立てられる計画が進められたが、環境アセスメントなどが行われ、計画が中止され、干潟が保護された。環境アセスメントとは何か。簡単に説明せよ。(2018年奈良県公立入試問題)」

 

問題の前半部には、さまざまな語句が登場します。都市部、埋め立て、湿地、ラムサール条約、伊勢湾、藤前干潟、廃棄物処理用地……この段階で、一定数の受験生が問題文を読むのにストレスを感じることでしょう。「藤前干潟?それ、どこだよ!!」「廃棄物処理用地?きいたことねーよ!!」といった状態です。難しい言葉や聞いたことのない言葉にある程度の耐性が無いと、「なんだか難しそうだから、どうせ解けないんだろう」という決めつけが始まります。しかしながら、この問題で聞いているのは至極単純で、「環境アセスメントって何?」ということだけです。もし、この問題が、「伊勢湾の藤前干潟で行われた、環境アセスメントとは何か。」という問題であれば、一気に難易度が下がって見えるはずです。問題で聞いていることはとてもシンプルにもかかわらず、そこにたどり着くまでの前置きを工夫することで、あたかも難しいことを聞いているような感覚を生みだしているのです。問題の第一印象って大事ですね。まずは模試などで分からない言葉があっても、そこで諦めて居眠りするのではなく、最初から最後までゆっくり読んでみると、書かれてあることが思っているほど難しくないことに気がつくはずです(とりわけ学力層の低い子は、問題に出てくるかたい言葉に慣れることは欠かせません)。

 

また、他にはこんな問題もあります。

 

「米騒動が起きた原因について述べた次の文の空欄にあてはまることばを、日本が行ったこととその目的を明らかにしながら、「社会主義」という語句を用いて書きなさい。(2018年福島県公立入試問題)」

 

この手の問題は、解答の条件の見落としを避けなければなりません。「日本が行ったこと」、「その目的」、「社会主義」という指定語句の使用を守ることが最優先です。予め解答ルールが明記されているのに、そのルールを破れば得点を失うのは当然です。もちろん記述内容は重要ですが、その前に相手の提示したルールに従うのが基本です。何を答えるのか、何を使うのかをチェックするのは、問題文を読んだその瞬間にすべきことです。何となくわかったつもりは危険です。記述問題でいくつかの条件が与えられる問題は福岡県でも見られます。この手の複雑に見える問題は、小さいパーツに分断して見ると大して難しくないことがほとんどです。この問題でも、日本が行ったのはシベリア出兵、その目的はロシアでの革命を防ぐため、あとは「社会主義」というワードをどこにくっつけるかの問題です(もちろん、「社会主義革命」のような使い方をすべきなのはお分かりですよね?)。それぞれのパーツはただの一問一答であり、それらを論理的につなぎ合わせるだけの問題なのです。

 

必死に受験勉強を積んできた受験生が全く知らない問題は公立入試には出ることはありません。教科書の中で太文字になっているもの(いわゆる超基本知識)を中心として、正しく丁寧に勉強をしていれば誰でも解けるようになっているのが公立高校入試です。先ほどの「藤前干潟」という場所を中学生はきっと知らないでしょうが、そのような見たことも聞いたこともないであろう知識は、問題文には登場したとしても、解答を形成する「核」にはならないということです。語句の一問一答やありきたりな理由説明、内容説明ばかりでは、みんな高得点をとってしまい、合否をつけることができないため、簡単な問題を意図的に複雑にするのです。それゆえ、受験生に求められるのは、その複雑につくられた入試問題を、一つひとつ吟味し、分解し、必要な情報を取捨選択し、相手の求める形(=自らの解答)にして提供することです。この過程こそが、いわゆる思考力・判断力・表現力というものではないでしょうか。

 

知らない曲であっても、何回も聞いたり、練習したりすると、すぐに歌えるようになり、カラオケで盛り上がることができます。それは勉強も同じで、繰り返し知識を身につけ、テストのしくみに慣れてしまえば、問題に対して抱く抵抗感やストレスは激減します。簡単な一問一答や手の届く範囲の勉強も必要ではありますが、自分のテリトリーから貪欲に手を伸ばしていくことで自分の知識や能力の限界を広げていくのです。「難しそうだから」と簡単に手を引いてしまうのではなく、受験生であればぜひとも難しそうな問題にもチャレンジしてください。

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