2024年3月5日
  • 須恵町にある高校受験専門学習塾

ちょっと立ち止まって

1つの事象を当然のことと考えずに、「なぜだろう」と疑ってかかったり、「どうにか利用・改善できないかな」と想像しようとしたりする姿勢は大切です。私たちの生きている社会は、有り余るほどのもので満たされています。にもかかわらず、日々新たなものが売り出され、古いものが消えていくのは、ものをつくる人間が現状に満足せず、より良いものを生みだし続けているからです。そしてこれだけ物質的に豊かな社会において、新たなものを生み出すためには、ある事象をこれまでとは違った角度から見たり、立ち止まってその原因や背景を考えることが必要です。光村図書の中1国語教科書に掲載されている、桑原茂夫の「ちょっと立ち止まって」というものをご存知でしょうか。この地域は三省堂ですので、知らないかもしれませんが、その中にもこのような記述があります。(中1の教科書に掲載されているだけあって、文章の構造を簡単に捉えることができますね。きっと塾生であれば、色分け・マーキングしたくなるはずです。いや、したくならないと困ります!!)

 

「私たちは、ひとめ見たときの印象にしばられ、一面のみをとらえて、その物の全てを知ったように思いがちである。しかし、一つの面でも風景でも、見方によって見えてくるものが違う。そこで、物を見るときには、ちょっと立ち止まって、他の見方を試してみてはどうだろうか。中心に見るものを変えたり、見るときの距離を変えたりすれば、その物の他の面に気づき、新しい発見の驚きや喜びを味わうことができるだろう。」

 

現代は、以前までとは比べ物にならないほど、他者の考えや見方、文化にふれることのできる機会・手段が豊富にあります。スマホ一つで世界中の人間とつながり、自らの見識を広げることができるのです。しかし、そのように知識を得ることが容易になると、そもそも自分の頭で考えようという意識が希薄になります。たとえば、漢字が思い出せないとき、スマホが無い時代はなんとか記憶の奥から引っ張り出そうとしますが、今では即座にスマホで検索です。あるいは、現代文の中に知らない語句が出てきたときに、内容から意味を推測する前に、スマホを使います。漢字を調べる、語句の意味を調べるという目の前の問題は解決して、一応その場をしのぐことはできます。しかし、記憶することをスマホを頼り、ああでもないこうでもないと考えることを放棄し続けるのが本当にいいことなのかは、どうしても疑問符がつきます。何不自由なく知識を得ることができる社会だからこそ、ちょっと立ち止まって考えることにこれまで以上に大きな意味があると思うのです。一つのことをより深く考え、多角的に見ることで、物事の本質が見えてきますし、ひいてはそれが自分らしさや新たなものを生み出すアイディアへとなるのです。

 

話は変わりますが、昔の冷蔵庫はその多くが冷凍室が一番上についていました。私も小さい頃は背伸びをして、一番上の冷凍室からアイスクリームを取り出していた記憶があります。夏の暑い日には、汗ばんだ顔へと冷気を浴びせることもありました。一番上の冷凍室を開けると、冷気が外へ逃げ出し、下の方へと降りてきます。しかし、小さいころには誰もそんな見慣れた光景には何の疑いも持ちません。冷気が外に逃げ出し、降りていくのは当然だという意識があるからです。ところがあるとき、そのような光景に疑いを持った人がいたのです。「冷気が逃げると、冷凍室の温度が上がってしまうじゃないか。それだと温度を保つためにより多くの電気を消費するだろう」と。ではなぜ冷気が移動するのでしょうか。それがまさしく、中学校で勉強する気圧や密度と関係してくるのです。冷たい空気は、暖かい空気の方へ移動し、密度が高いので下に移動しようとします。そのような中学生であれば当然の知識を利用し、冷凍室の空気が下に移動できないようにつくられているのが、冷凍室が中段や下段についているタイプの冷蔵庫です。昔は冷凍室が上段にあったため横から扉を開けなければならず、冷気の流出を許していましたが、今はほとんどが引き出しタイプとなり、冷たい空気を冷凍室にキープしています。引き出しタイプにすると、上段に設置すると中のものが取り出せないため、中段や下段に設置しているのです。私も中学時代にこれを知った瞬間、これまで見えなかった一歩先の世界が見えたような気がしました。勉強することが日常生活で役に立つんだと知ったからです。

 

「当たり前=優れている」というわけではありません。当たり前だと思っていることであっても、見方を変えたり、疑ってかかることで、よりよいものを生み出すことが可能です。そして、中学校では基礎の基礎を勉強していきますが、その基礎の基礎であっても十分問題解決に役立てることができるのですから、義務教育の勉強を疎かにしてほしくはないのです。それが、教育に携わる一人の大人の願いです。

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