2024年7月27日
  • 須恵町にある高校受験専門学習塾

二項対立

教育業界において非常に頻繁に行われる議論の一つに、「勉強で大事なのは暗記か、理解か」というものがあります。twitterなどでも、「勉強は理解しなければ意味がない」と誰かが言えば「それは現場を知らない理想論で、受験勉強のほとんどは暗記すればできる」と突っかかりますし、逆に「勉強の99.9%は暗記だ」と言えば、「そんなこと言っているから勉強嫌いが大量発生するんだ」と言い合う始末です。こんな不毛な議論をtwitterという場で定期的に行っているのです。

 

青凜館生は、「二項対立」という言葉に慣れてきたでしょうか。広辞苑には、二つの概念が対立の関係にあること。また、その概念によって世界を単純化してとらえること、という意味で掲載されています。国語の説明的文章で多用される形式で、青凜館の授業でも二つの概念を色分けしながら読み解いています。入試問題がきれいに色分けできなければ、正解をを一つに絞ることはできませんし、このご時世、教育関係者から不完全さを突っ込まれる要素を可能な限り排除しなければなりません。そのため入試問題で取り扱われる文章は、ものの見事に二項対立の構造になっているのです。しかし、その色分けは入試問題に出てくる文章だから可能なのであって、現実世界ではそれほどはっきりとした色分けは不可能です。先の「勉強は暗記か、理解か」の例も然りですが、どちらかで片が付く問題ならばとっくに解決しているでしょう。普通に考えれば「暗記」も「理解」もどちらも大切です。どちらかだけで乗り越えるのは不可能です。問題はそのタイミングとバランスなのではないでしょうか。例えば、社会の歴史は「流れを理解することが重要だ」とよく言われます。確かに流れというものを理解していれば問題は解きやすくなります。しかし、現実的に歴史の流れを完全に理解することは簡単ではありません(そもそも歴史を指導する人間ですら歴史の流れを理解している人はごくわずかだと思われます)。ではその不完全さを補うためにはどうすべきでしょうか。答えは簡単で、重要な知識を「暗記」すればいいのです。重要な知識というのが、年代であり、江戸幕府の将軍であり、各時代の文化遺産なのです。極端な話、重要年代をすべて暗記していれば、年代の並び替え問題は無敵になります。

 

こんなことを言うと、教育関係者からは「何言ってんだ」と思われるかもしれませんが、私としては中学校の勉強の大半は「暗記」だと思っています(とりわけ定期考査の90%以上は暗記しているかどうかです)。高校や大学の勉強に比べ、「暗記」の要素が非常に大きいのが、高校受験です。昨今、思考力が必要だと言われますが、思考するも何も、必要な知識がないのに思考することはできません。子どもたちは暗記することを嫌いますが、覚えなければならないことは覚えなければなりません。ただし、その「暗記」も「理屈や理解」と一緒に行うと、身に付きやすいですし、忘れたときにも理屈から辿って求めることもできるかもしれません。入試問題のように二項対立の構造で割り切ることはできませんが、「暗記」にしても「理解」にしても、時間をかけなければ身につかないことは自明です。

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