2024年12月11日
  • 須恵町にある高校受験専門学習塾

わかりやすいはわかりにくい?

本日、志免東中周辺を中心に新聞広告を入れました。ご覧になり、早速お問い合わせいただいた方もおられました。ありがとうございます。新聞購読数が減少しているとは聞きますが、やはり新聞広告も捨てたものではないようです。

 

広告を見て何となくお分かりかもしれませんが、青凜館は「容易に入塾できる塾」ではありません。主体的に勉強する気持ちがなければお断りをしています。そのため面談時もしくは体験時に、「本気で勉強する気があるか」と尋ねます。そう問われると、子どもはなかなか即答できないものですが、そこで即答できるかできないかは重要ではありません。自ら思案し、勉強するという決断を自らが下すことが重要なのです。このブログでも述べていますが、主体的に学んで学力を伸ばすことに意味があるのです。他人に促されて、しぶしぶ机に向かったところで、挫折するのは容易に想像できます。

 

大手塾がほぼ毎週のように広告を出しています。カラフルな写真を用紙いっぱいに載せ、「春期無料」「これで予習もばっちり」などと大きく謳っています。そもそも勉強を教えるという本質はどの塾も変わりません。どの塾も教えている内容は同じです。ですから他塾と差別化しようと思えば、より目につきやすい広告を作るとか印象に残るCMを流すとかしかありません。確かにカラフルでぱっと目に留まるのですが、その塾自体の色というものが全く見えません。何を大切に指導しているのかを感じ取ることは至難の業です。以前も述べたように、多数の人から支持されようと思えば平易な内容に落ち着くのは当然のことなのですが、広告においても同様で、最も重要な中身を置き去りにして、外見のとっつきやすさ、分かりやすさでの勝負となっているのです。

 

そういう意味で、今回の広告は「誰もが読みやすい広告・とっつきやすい広告」にしてはいません。絵や写真は全く入れていません。色も最小限にとどめています。文字も決して大きくありません。文字の大きさの強弱もありません。単に、青凜館が考える「勉強する意味」「塾に通う意味」「勉強に対する厳しさ」を記述しているだけです。この広告を手にとって「読むの面倒くさい」と思われた方は多くいるでしょう。そもそも目に留まることなくスルーした方もいるでしょう。しかし、少なくともこの広告を手に取り、最後まで読んでくださった方は、本気で子どもの学力に向き合い、本気で塾を探しているのだと信じています。

 

そもそも塾の存在意味などのように重要なことを簡単な言葉で表現することは不可能です。それは塾に限らず、野球選手だって、お医者さんだって、大工さんだって同じです。彼らの仕事内容ややりがいを一言で表すのなどできません。でも社会は、より簡単、より端的であることを望みます。そうでなければ慌ただしい現代社会を駆け抜けることができないからなのでしょう。容易さに慣れてしまい、複雑なものに大きなストレスを抱くのでしょう。しかし、短いフレーズに収まりきらず陰に隠れたところに物事の本質があることは決して少なくありません。簡単に表すことによって、こちらの不利益になることを隠すことだってできるはずです。簡単なフレーズを見たときに、それを深く知ろうとする意識が働かなければ、実は大きな損をしているかもしれないのです。

 

鷲田清一という学者さんをご存知でしょうか。数年前まで大阪大学の総長をされていました。哲学についての本を数多く書かれており、入試問題にも多数取り上げられる方です。そんな鷲田さんの『わかりやすいはわかりにくい?』という著書にこんな言葉があります。

「ためらいもなければ、含みも曲折もない、そんな単純な物言いが溢れている。思考を停止したまま、不安や不安の強度を単純に高めるだけの、そんな粗雑な物言いが。ワン・フレーズのイメージ語、それが人々の意識をさらってゆく。それは、ワン・フレーズで言い切られるものであるがゆえに、屈曲もなければ否定による媒介もない。つまりは「極・単」(ごく単純)このうえない。屈曲も否定による媒介もない思考には、他のひとびとへの思いや感じ方への過剰な同調はあっても、奥行きはない。」

 

「極・単」という言葉には、鷲田さんの皮肉が込められています。鷲田さんは「単純な物言い」自体を否定しているわけではありません。鷲田さんが問題視しているのは複雑な部分から目を背け、表面上にある単純な物言いだけを見ている点にあるのです。「複雑」と「単純」の往還、ひいては「具体」と「抽象」の往還にこそ深い学びの楽しさがあるのではないでしょうか。

 

成績を上げるということは、単純な話ではありません。勉強をすれば正比例で成績が伸びるのであれば、こんなに楽なことはありませんが、現実はそうではないのです。「子どもの意識」「家庭環境」「親子関係」「目標の有無」そして「塾の学習環境」「指導者の力量」が複雑に絡み合って、子どもの学力が高まっていくのです。そんな成績に複雑に深く絡み合ったパーツの一つである塾を簡単に選ぶことはよくありません。簡単に選んでしまった塾が、良くも悪くも子どもの学力に影響を及ぼすことは言うまでもありません。注意深く見極めて、納得したうえで子どもを預けるべきです。ましてや表面上の優しい言葉にはご注意ください。

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