2024年5月17日
  • 須恵町にある高校受験専門学習塾

あえて全部覚えない作戦

勉強の負担を少しだけ軽くするコツに、「あえて全部覚えようとしない」というものがあります。「えっ?テスト勉強なんだから全部覚えないといけないんじゃないの?」と思われるかもしれませんが、全部を覚えようとしないほうがいいこともあるのです。

     

中学2年生の理科の試験範囲には「炭酸水素ナトリウムの熱分解」というものがあります。ここでは、加熱前の《炭酸水素ナトリウム》と加熱後の《炭酸ナトリウム》の区別法が問われます。これらを区別する問題は、3月に行われた福岡県公立高校入試でも出題されました。全部覚えようとする子のやり方は以下の通りです。

     

炭酸水素ナトリウムは水にあまり溶けないけれど、炭酸ナトリウムはよく溶ける。炭酸水素ナトリウムを水に溶かしてフェノールフタレイン液を加えるとうすい赤になるけれど、炭酸ナトリウムを水に溶かしてフェノールフタレイン液を加えると濃い赤になる。

     

これをきっちり理解・暗記している子はそれはそれですばらしいです。覚えるまでちゃんと勉強したのでしょう。でも私はこのようなやり方はおススメしていません(理由は後で説明します)。そこで授業では以下のように覚えるように指導しています。

      

炭酸水素ナトリウムの実験では、加熱後にできる炭酸ナトリウムの特徴だけを覚えなさい。加熱後は水によく溶けるし、フェノールフタレイン液を入れると濃い赤になる。つまり、加熱後の方が見た目の変化が大きいと覚えておく。

      

《炭酸水素ナトリウム》と《炭酸ナトリウム》は名前が似ていることもあってか、「どっちがよく溶けるんだったっけ?」「どっちが濃い赤になるんだっけ?」と迷いやすいです。これまでも迷った挙句逆に答えてしまう子を何人も見てきました。紛らわしいものを全部覚えようとすると、全部を覚えるがゆえに暗記にメリハリがつきません。その結果、「あれ、どっちだったっけ?」となるのです。ゆえに、反応前の炭酸水素ナトリウムはいったん忘れて、反応後の炭酸水素ナトリウムだけを覚えるようにするのです。ここでもまずは上記のように、「加熱後の方が変化が大きい」というざっくりとした結論を示します。習いたての子にとっては「炭酸ナトリウム」や「フェノールフタレイン液」という語句が負担になることがあるためです。まずは大雑把で構いません。それから徐々に覚える内容を具体的にしていけばよいのです。

      

炭酸水素ナトリウムの熱分解では、もう一つ紛らわしいものがあります。それは塩化コバルト紙の色です。塩化コバルト紙とは水に反応して色を変える試験紙なのですが、これの色が出題されることがあるのです。塩化コバルト紙はもともと青色をしていますが、これが水に触れると赤に変わります。色の変化は「青から赤」が正しいことになります。しかし、頑張って「青から赤、青から赤、青から赤…」と覚えても、いざ問題で聞かれると「青と赤っていうのは分かるけど、どっちが先だったっけ?」となります。迷う原因は「あお」と「あか」という言葉自体が似ている点にあるのではないかと私は考えています。そこで私は塩化コバルト紙の説明では必ず、「青色(の)塩化コバルト紙」と言うようにしています。「赤色リトマス紙」「青色リトマス紙」と同じように、「青色塩化コバルト紙」と言っておけば、もともとの色が青だと分かりますし、反応後に赤色になるのも容易に想像できます。ちょっとした工夫ですが、「青から赤」と覚えるよりもはるかに迷いが減ります。

     

これらのように、勉強をしている中では「これ似ているなぁ」「ややこしいなぁ」というものが多々あります。私も学生時代には一生懸命全部を覚えようとしていました。そして、テスト本番で迷って不安になっていました。幾多の失敗を経て、似ているもの全部を頭に詰め込もうとしたため、頭が混乱したのだと気づきました。似ているものを覚えるコツは、全部をまんべんなく覚えるのではなく、一方を強烈に印象付けることです。暗記に強弱をつけることです。今回は炭酸水素ナトリウムの熱分解を挙げましたが、まだまだややこしいところはあります。それらを効率よく勉強できるのは学習塾に通うメリットだと思っています(塾生には、自学や他塾では絶対に気づけなかったり教わらなかったりするようなことを惜しげもなく伝えています)。今回は「全部覚えない作戦」についてのブログでした。

      

      

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