2024年7月27日
  • 須恵町にある高校受験専門学習塾

令和3年度 福岡県公立高校入試分析④(理科編)

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毎年言っていることですが、福岡県の入試でもっとも点を取りやすい科目は理科です。上位校受験者であれば、理科で50点以下はなかなか厳しいです。下位層の子でも、対策次第で40点は十分狙えます。

例年通り、大問8題構成でした。今年も易しかったという声が多いですが、いったいどうだったのでしょうか。見ていきましょう。

    

●大問1

中2の動物の分類が出ました。いや~まさか動物の分類が出るとは思いませんでした。動物の分類は、昨年の11月頃にがっつり扱った後は、過去問や模試で出たときのみ確認するという程度でした。理由は2つ。一つは出題される可能性が低いと思っていたから。もう一つは、ただの暗記なので、その都度確認すれば十分だと判断したからです。今年出題されるのは予想外でしたが、結果的に、塾生は全員正解していました。思考力の有無以前に、単純暗記から逃げているようでは、点は取れないということですね。

問1 両生類のおとなの呼吸のしかたを答える問題。空欄が2か所あるので、間違えるわけはありません。過去問でも複数回出ています。易しい。

問2 哺乳類と同じく恒温動物であるなかまを選ぶ問題。鳥類のハト(D)を選びます。また、恒温動物の体温の保ち方を説明する問題も基礎中の基礎ですね。易しい。

問3 セキツイ動物のなかまを分類する問題。トカゲとカメがハチュウ類というのも当然の知識です。それが分からなくても、①,②の特徴で絞り込むことはできます。易しい。

問4 無セキツイ動物のからだの特徴に関する問題。平成25年以来の無セキツイ動物です。

(1)は節足動物の体をおおっている「外骨格」を答える問題です。平成25年にも似た問題がありますし、そもそも基本知識でもあります。易しい。

(2)は軟体動物のなかまを選ぶ問題。これも平成25年に出ています。イカやタコだとだれでも正解できるので、大抵は2枚貝のなかまが正解となります。また、ひっかけの選択肢としてミミズやクラゲが入ってくるのも読めていましたね。易しい。

ここ数年の大問1は実験・考察問題が出ていましたので、それに比べると圧倒的に簡単でした。

    

●大問2

細胞分裂の観察問題。毎年出ている見開き1ページの対話問題が、ここで出てきました。タマネギの根の観察は平成29年に出題されています。遺伝の規則性が出ると予想をしていましたが、完全に外しました。

問1 顕微鏡の使い方についての問題。視野の「中央」という答えは、ずいぶん前(平成18年)に出題されたことがあります。まあでも考えたら分かりますね。「しぼり」に関する問題は平成29年に出ました。このときはしぼりを表す部分を選ぶ問題でしたが、今年は語句を答えるものでした。語句で「しぼり」と答える問題は、平成14年に出題がありました。易しい。

問2 根が成長するしくみについての考察問題。

(1)は細胞分裂の過程通りに並びかえる問題。何度も解いたことがあるでしょう。平成29年にも同様の問題が出ています。易しい。

(2)は細胞分裂により根が成長するしくみを答える記述問題でした。細胞の数がふえて、それぞれの細胞が大きくなることを記述します。これも平成29年にほぼ同じ問題が出ています。易しい。

問3 体細胞分裂の前後で、それぞれの核にある染色体数が等しくなる理由を答える問題。前半に「染色体が複製される」という内容を書くのは難しくありませんが、後半の書き方はやや悩ましいでしょうか。「(X)にそれぞれ入る」とつながっていることから、「2つの細胞」などと答えます。(Y)の「体細胞分裂」は基本です。やや難しい。

ほとんどが過去問や模試などで出たことがある問題であったため、見た目ほど難しくありません。問3の記述だけはやや手こずったかと思われます。

     

●大問3

蒸留と密度に関する問題。蒸留は平成29年以来の出題、密度は平成28年以来の出題です。

問1 水とエタノールの混合物の蒸留です。何度も解いたことがある問題です。

(1)は、温度計を取りつける位置として正しい図を選ぶ問題。液体の温度ではなく、気体の温度を測るので、枝分かれしている位置に球部がくるようにします。実験の手順には何かしらの理由があるので、それとあわせて学習することが大切です。普通。

(2)ははじめにエタノールが多く出てくる理由を説明する問題です。エタノールは水よりも沸点が低いことを述べます。平成15年、平成21年に同様の出題があります。易しい。

(3)は「蒸留」という語句を答える問題です。易しい。

問2 ポリプロピレンの浮き沈みのようすから、ポリプロピレンの密度について記述する問題。水には浮いて、エタノールには沈んでいるので、ポリプロピレンの密度が、水の密度よりも小さく、エタノールの密度よりも大きいことがわかります。密度と浮き沈みの問題は直前にやっていたので、楽勝でしたね。普通。

割と最近の過去問でも出題がありましたので、それほど難しくは感じなかったはずです。実験操作についての問題は必ず出題されますので、学校の実験には積極的に参加してほしいものです。

    

●大問4

炭酸水素ナトリウムの熱分解の実験問題。この実験は何度も解いてきたところですので、問題を見た瞬間「もらったぜ!」と思ったことでしょう。

問1 塩化コバルト紙の色の変化を選ぶ問題。ただ覚えていればいいだけの問題です。易しい。

問2 炭酸水素ナトリウムと炭酸ナトリウムを区別する実験方法を述べる問題。炭酸ナトリウムの分解を扱うたびに、しつこいほど確認したところです。易しい。

問3 この実験のまとめからの問題。

(1)はこの実験の化学変化を化学反応式で表す問題でした。これも何度も書いてきたものです。易しい。

(2)は「分解」の語句を答える問題です。易しい。

問4 気体が発生する化学変化を選ぶ問題。すべて選ばなければなりませんが、冷静に考えればわかります。1で水素発生、3で酸素発生は基本です。2の硫酸と水酸化バリウム水溶液は、硫酸バリウムの沈殿ができますが気体は発生しません。4の水酸化ナトリウム水溶液とマグネシウムは、変化なしです。水酸化ナトリウムがアルカリだと判断できたかどうかです。迷うとしたら4の選択肢でしょうか。普通。

炭酸水素ナトリウムの熱分解という基本実験でしたので、目新しい問題は特にありません。

     

●大問5

地層の調査に関する問題。平成30年以来の出題です。「今年は絶対に地震が出る!」と確信していたのですが、地層でした。悔しいです。

問1 最も古い層を答える問題。だれが間違うのでしょうか? ただし、もっとも古い層を選ぶ問題でひっかけに近い問題(平成19年)が出たので、気を抜いてはいけません。易しい。

問2 れきが丸みを帯びた理由を記述する問題。同様の記述は、近年では平成27年に出題があります。平成13年、平成19年でも出ています。易しい。

問3 サンゴをふくむ地層がある地域の環境を答える問題。平成24年に同様の出題があります。覚えるべき示相化石のうち、一丁目一番地がサンゴです。むしろ、中下位層に子には、サンゴだけ覚えとけと言っています。易しい。

問4 化石をふくむ層の地層からの距離を求め、作図する問題。これは、お決まりの手順があります。面倒くさがらずに手順を踏んでいけば、間違うはずがありません。勉強に限らず、成功する人というのは面倒なことを怠らないのですよ。「マニュアル的」や「型通り」というのを否定する向きがある人もいますが、むしろそうするほうが堅実で、信頼できるのです。私のやり方を「マニュアル」だと思って、まずはその通り解けるようになることを目指してください。やや難しい。

最後の問題は平成30年のものの応用です。ただし、それ以外はめちゃくちゃ簡単です。分からなければ早々と見切りをつけて、確実にとれるところで稼いでおくことも重要です。

     

●大問6

日本の天気に関する問題。通常の年であれば、天気ではなく中3の天体が出ていたのでしょうが、今年は天体を避けてきました。これは大方の予想通りです。

問1 高気圧の中心の気流と風の吹き方を選ぶ問題。正解して当然というレベルです。易しい。

問2 寒冷前線が通過した根拠となる気象要素の変化を答える問題。図からわかる気象要素は、気温、天気、風向、風力の4つがありますが、ここでは風向の変化を答えます。6時の風向である南西と、9時の風向である北を入れて答えます。易しい。

問3 日本の春の天気の特徴を答える問題。春の天気をピンポイントで答える問題は、過去問では初めてではないでしょうか(相当昔の問題にはあるかもしれませんが…)。先生のセリフに「気圧配置の変化と天気の変化を関連づけて」とあるので、「周期的に天気が変わる」だけでは不十分です。「高気圧と低気圧が交互に通過する」を書かなければなりません。会話文中の穴埋めは、発言の前後をしっかりと読め!ということですね。

前線や日本の天気の範囲は、面倒な計算が出ないので知識だけで簡単に解けてしまいます。楽にわかるからこそ、条件や会話の流れの見落としが命取りになります。

     

●大問7

直列回路と並列回路を用いた電流の問題。設定としてはあるあるですが、ところどころに面倒くささがあります。

問1 直列回路の回路図をかく問題。回路図をかく問題は平成22年以来の出題です。そもそも、図を見て直列回路だと判断できなかった受験生もいたかもしれません。電流計や電圧計をどこにつなぐか、電源の+と-などがポイントでしょうか。易しい。

問2 並列回路全体の抵抗の大きさを求める問題。電源が3.0V、回路に流れる電流が250mAであることから、オームの計算を使います。中には、和分の積で求める子もいました。普通。

問3 直列回路と並列回路の電流の流れやすさを比較する問題。オームの計算をするまでもなく、回路による電流の流れやすさ、抵抗の大きさの知識は身に付けていることでしょう。普通。

問4 アイロンの使用時間を求める問題。ノートパソコンを80分使用したのですから、そのときの電力量は50×80×60(J)で求めることができます。これをアイロンの電力である1200(W)でわった値が、アイロンを使用した時間(秒)となります。問題の意味が理解できればなんてことありません。やや難しい。

直列回路の作図と電力の計算はやや面倒な問題です。問2、問3は間違えたくありません。

    

●大問8

斜面を転がる球の運動。計算が出てくるので苦手な子が多いところです。

問1 球の運動と、球にはたらく力に関する問題。「等速直線運動」は間違うはずがありません。球にはたらく力の作図は、「重力」ではなく「垂直抗力」であることがポイントです。重力と垂直抗力はつり合いの関係にあるので、球とレールの接点を作用点として、上向きに0.2N分の矢印を書きます。力の作図は、「何をかくのか」の確認を怠ってはいけません。易しい。

問2 質量の分からない球の質量を求める問題。比例式を使って解く人が多いでしょう。比例式のポイントは、「分からない部分以外の条件をそろえる」です。これが頭に入っていれば比例式を立てること自体は難しくありません。普通。

問3 位置エネルギーの変化を表すグラフに、運動エネルギーの変化をかきこむ問題。力学的エネルギーの保存を理解していれば余裕です。普通。

中3物理のこの範囲は、面倒な問題をいくらでもつくることができます。しかしながら、今年の問題の場合、問2の計算も、問3のエネルギーの変化もそれほど面倒ではありません。ふだんは計算があまりできない子もちゃんと解けていたので、わりと解きやすかったのでしょう。

     

個人的な大問ごとの難易度をまとめると次のようになります。

大問1 易化

大問2 昨年並み

大問3 やや易化

大問4 易化

大問5 昨年並み

大問6 昨年並み

大問7 昨年並み

大問8 やや易化

毎年のように、「理科はいちばん簡単でいちばん点を取りやすい」と言っていますが、今年はさらに易しくなった印象です。かつての、理科が難化していた時代が懐かしいですね。

来年の入試の一つのポイントは「ダニエル電池」が出るかどうかです。個人的には出てほしいと思っています。理由は、ダニエル電池が出れば、きっと差がつくからです。また、今年は天体の出題を避けてきましたので、来年は間違いなく出るでしょう。天体は一見面倒に感じますが、これも「マニュアル」通りやってくれれば、何の問題もありません。基本に忠実が、合格へのいちばんの近道なのです。

     

     

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