2024年7月27日
  • 須恵町にある高校受験専門学習塾

過去問と同じ問題は出ない

4日程前、とある書店に立ち寄り、参考書コーナーを覗いたとき、私立高校の過去問が並んでいる棚に受験生らしき男の子がいました。彼は父親と一緒に来ており、ああでもないこうでもないといいながらしばらく話し込んで、最終的には英俊社から出ている城東高校の過去問(表紙が赤のもの)を買っていきました。きっと彼の第一志望は私立高校ではなく公立高校なのでしょう。この時期に私立の過去問を買うということは、私立高校受験への気持ちのウェイトは小さく、公立高校受験を意識しているといえます。もし、私立高校が第一志望ならば、今ごろ過去問を買っている場合ではありません。もしかすると、彼は塾に通わず独学で受験を迎えようとしているのかもしれません。塾に通っていないと、「過去問がいつ発売されるのか」「過去問をいつ買えばいいのか」「過去問をいつ始めればいいのか」「どのくらいのペースで過去問を解けばいいのか」など判断が難しいでしょう。また、独学でようやく全科目の全分野の学習を終えて、やっと過去問を解ける状況になったのがこのタイミングなのかもしれません。いずれにしても、私立入試まで残り3週間という時期は、過去問を解きはじめるには遅すぎるというのが本音です。これから解いても、「解いて、答え合わせして、大体の点数を知って、それで終わり」ということになりかねません。過去問は、大体の自分の立ち位置を知るために重要ですが、それだけのためにわざわざ数時間かけて過去問を解くのはあまりにも非効率です。半年前の時間の使い方と受験まで1か月を切ったこの時期の時間の使い方を同じように考えてはいけません。受験が目前に迫ったこの時期というのは、過ごし方次第では、これまで身につけた知識が一気につながりを持ち始め、問題の見方や取り組み方を吸収し、上昇カーブを描いていく時期でもあります。そんな爆発力を持った時期に、ただ過去問を解いて、ただ答え合わせをするだけの時間を過ごすのは避けるべきです。

     

過去問を解いたり、やり直しをしたりする際に意識しておかなければならないことは、「過去問に書かれている問題が、再び出題されることはない」ということです。たった4,5年の間に、同じ問題が出題されることはないのです。もちろん同じような考え方を使う問題や出題の意図が同じような問題が出題されることがあります。しかし、解法も、手順も、問題文も、すべてが同じ問題はあり得ません。にもかかわらず、子どもたちがやり直しをすると、「目の前の過去問をどう解くか」にこだわりすぎており、同じ問題だけしか解けなくなってしまうことが少なくありません。それは中学生に限らず、大学受験を控える高校生にも言えることです。そういう子は一度やった問題はできるけれど、数値や問題文、その他細かい設定が変わってしまうと「全く別の問題」と認識してしまいます。すると、新たな問題も解き方を一から習得していこうとします。そして、また設定が変わると太刀打ちできず、解法を習得しようとします。どれもすべて考え方が共通しているにもかかわらず、表現が変われば別のものだと認識し、「目の前の問題だけの解法」を得ようとします。100の問題に出会えば100個の解法をマスターしていきます。本来であれば1つの共通項から導くことができる問題であっても、なんとか100個を詰め込もうとするのです。ところが、残念ながら入試ではこれまで見たことがない101個目の問題が出ます。そうなると、「やったことないからできない」と言うことになるのです。

     

子どもたちは、対策の時間が限られていればいるほど、解法や語句を詰め込み・暗記で済ませようとします。定期考査の勉強をテストの3日前から始めるような子が、言葉や内容を理解することを放棄し、とにかく暗記しようとするのと同じです。こう問われたらこう書けばいい、というような具体的な問題にしか対応できないやり方は、定期考査であればなんとかごまかすことができますが、入試のような巨視的な取り組み方が必要な場面では、ほとんど役に立ちません。勉強をする際には、具体的な問題だけを見るのではなく、抽象化・一般化することが必要です。特に、過去問を解いていると、目の前の問題を解けるようにすることに気持ちが向きがちですが、その目の前の問題は次に出ることはないのですから、意識を切り替えるべきです。やり直しをするときには、「どう解けばいいのか」という具体的な解法だけではなく、「どのように考えることが必要だったのか」「どのように問題を読んでいけばよいのか」など、別の問題が出されたときにつながるマクロの視点を忘れてはいけません。むろん、語句の暗記や公式・単語も重要です。しかし、それらを必要なときに、必要な形で使うためにも、視野を広げておくべきなのです。そのためにはある程度の時間が必要です。先にも述べたように、時間的な制約があると、その場しのぎのやり方にとどまってしまうからです。ゆえに、先日書店にいた、これから過去問演習を行おうとしている少年が気になってしまったのです。この記事を間違いなく読んでいないでしょうが、解いて終わりにならないよう頑張ってください。

   

塾の指導でも、「次にどうつなげるか」という視点は外してはいけません。今の学年の、今の内容だけに通用する知識ではなく、1年後、2年後を見こしたときに、必要な見方・考え方疎かにしてはいけません。この辺の話は長くなるのでまた稿を改めましょう。とにもかくにも、勉強を少しでも楽にしたいならば、100の問題のために100の解法を身につけるのではなく、100の問題につながる1つの考え方・理論をじっくり習得するべきです。

    

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