昨日、北海道札幌市で爆発事故が起こりました。多数のけが人が出たようですが、幸いにも死者は出ていないようです。このニュースを見て、今年の全国入試問題でガスに関する問題が出されていたことを思い出し、問題集から探してみたところ、今年の山形県の公立高校入試問題に次のようなものがありました。
「都市ガス用のガスもれ警報器は、部屋の高い場所に設置しなければならない。都市ガス用のガスもれ警報器を部屋の高い場所に設置する理由を、気体の性質に着目して、簡潔に書きなさい。」
最近ではオール電化の家庭も珍しくありませんが、ガスを使っている家庭は、ガスもれ警報器を設置する場所には決まりがあるということを聞いたことがあるはずです。ご家庭で使うガスには、大きく2種類があります。それが都市ガスとLPガス(プロパンガス)です。どちらのガスを利用するかによって、警報器を設置すべき場所が異なるのです。都市ガスの主成分はメタンで、このメタンは空気よりも密度が小さい(簡単に言うと、空気より軽い)ため、上方にたまっていきます。そこで最初にある問題のように、都市ガスを使う際には、ガスもれ警報器を高い場所に設置しなければ意味をなさないのです。反対に、LPガスの主成分であるプロパンやブタンは、空気よりも密度が大きい(空気よりも重い)ため、下方にたまっていきます。よって、LPガスを使うご家庭には、ガスもれ警報器は下の方に設置するように指導されます。ちなみにカセットボンベのガスはLPガスなので、穴あけの際に出てくるガスは下の方にたまります(須恵町のゴミ出しでは、ガス缶は穴あけすることになっています)。ガスには臭いがつけられていますので普通は屋外でガス抜きするでしょうが、万が一室内で大量のガス抜きをする際には、足元の換気が必要となります。ちなみに新幹線のトイレでは、臭い成分のアンモニア(空気より密度が小さい)が上方にたまることを防ぐために、下部から掃除機のような装置で空気を吸い込んでいます。臭いのものとなるアンモニアが上昇する前に吸い込んでしまうことで、次に利用する人が快適に使用できるようにしています。ものごとの原理・しくみを知ることは、自分の命や他者の命を守ること、より快適に暮らすことなど、私たちの生活に直接的・間接的につながるのです。(ちなみに、一昔前までは空気よりも重い・軽いという言葉での説明が多かったのですが、最近は空気より密度が大きい・小さいという言葉で記述させることが多くなりました。重い・軽いはイメージしやすいですが、密度になるとピンとこない子が多く、それだけ間違いも多くなります。)
かつての哲学者フランシス・ベーコンも「Knowledge is Power(知は力なり)」と述べています。ベーコンは新たな学問の方法として帰納法を提唱したことで知られています。帰納法とは具体的な事案の観察を通して、一般的真理(法則)を発見する方法です。ベーコンは何度も実験と検証を繰り返して、法則にたどり着くことを目指しました。では、彼はなぜそのようなやり方を提唱したのでしょうか。中世の哲学は、すでに知られた事実をただ説明することに重きを置いており、ベーコンはこれを批判しました。そして、学問は、人間の生活向上に役立つ自然法則を発見するためのものであるべきだと主張したのです。ベーコンの登場により、学問と人間の生活との関連性が一気に高まっていくのです。なんだか、最近の教育改革と似ていませんか?簡単に知識を手に入れられる時代だからこそ、何を学ぶかではなく、何のために学ぶのか、学んだことをどう用いるのかを考えていくことが求められるのです。
今回の札幌で起きた事故は、大量ガス抜きをした消臭スプレーの成分に引火したのではないかといわれています。消臭スプレーの成分は何なのかは分かりませんが、100本以上の穴をあけるのならもう少し慎重にするべきであっただろうなという印象です。日々嬉しいニュース、悲しいニュースが飛び込んできます。これらの具体的な事案を対岸の火事とするのではなく、他山の石としていくことで、生きた知識も見識も増えていくのではないでしょうか。そんなことを考えふと考えた、昨日のニュースでした。
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