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昨日・今日で自己採点が終わりました。もちろん、科目によって、「よくここまで取れたなあ」「なんとか粘ったなあ」など良し悪しはあります。英進館さんが合否ボーダーを出してますので、気になる方はご覧ください(見ても、合否は変わりませんが…)。あとは、18日の合格発表を待ちましょう。
今回からは、昨日行われた公立高校入試問題の分析を行っていきます。1回目は国語です。
大手塾のように大人数で分析しているわけではありません。一個人の感想です。詳細な分析が知りたい場合は、どこかの塾のホームページを見るか、どこかの塾がやるであろう「入試分析会」などに参加してください。
大問数は昨年から1つ減りました。昨年までの大問1と大問2が、1つの大問に集約されたためです。構成や形式に変化がありましたが、難易度はどうだったのでしょうか。見ていきましょう。
●大問一
【文章】、【ポップの下書き】、【ポップを作成するためのメモ】という3つの資料が出てきました。受験生の大半が、「いきなり説明文かよ!」「え? 次のページまで続いているの?」と驚いたはずです。そして、それを理解するのに多少の時間がかかったはずです。ただし、次のページまでつながっているといっても、(2)の問一以外は前のページの【文章】からは独立しており、実質的には昨年までと同じ問題構成であったともいえます。複数の資料の読み取りや照らし合わせというのは、大学入試共通テストの施行調査が行われて以降、全国の高校入試でも増加しています。福岡県でも、数年前からその傾向はみられていましたが、今年はそれがさらに加速したという印象です。
今年の説明的文章は、榎本博明『「さみしさ」の力 孤独と自立の心理学』でした。私なりの簡単な解釈は以下の通りです。
インターネットやSNSが発達した今日において、現代人は常にだれかとのつながりを求め、強いられ、あるいは気づかないうちにつながってしまう環境にいます。パソコンやスマホによる接続が遮断されると、何もすることがなくなり、退屈になり、すぐにまたつながりを求めてしまう。これを、「外的刺激に反応するだけの受け身の生活」と言います。「主体的で創造的な生活」への転換のために、あえて退屈な時間を持つことで、自分の世界に沈潜することが必要です。若者にとって、一人で行動するというのはそう簡単なことではありません。それでも、群れる時間をもちながら、一人の時間をもつようにするべきです。一人の時間を持つことで、思考が深まり、人間に深みが出ます。そうすることで、自分に自信が湧いてきて、頼もしく見えるのです。
文章としては対比関係や論理の展開がわかりやすいものです。文章量としては、昨年よりやや少ないぐらいでしょうか。昨年同様、表を用いて内容を整理する問題はありませんでした。
大問一 (1) 説明的文章の読解
問一 「自分の世界に沈潜する」ためには何が必要かという抜き出し問題。「必要」という言葉に引きずられて、「一人でいられる力をつける」と答える子がいましたが、文末は体言で終わらなければならないことに加え、そもそも解答としても適しません。たとえば、「自動車事故を起こさないようにするためには何が必要か」という質問に、「事故を起こさない力をつける」と答えるのは誤りです。これはただの繰り返しでしかありません(この種の答え方をする子は、特に小学生に多くいます)。昨年は解答箇所が遠かったのでやや難しかったですが、今年は範囲の設定と文字数の指定があったので、それほど難しくありません。普通。
問二 傍線部の具体的な内容を含む段落を選ぶ問題。筆者が言う「外的刺激に反応するだけの受け身の生活」の具体例が述べられた段落を探します。これは簡単にBを選べたでしょう。易しい。
問三 「私たちの言葉は~思考の活性化を意味する」の説明を選ぶ問題。1の選択肢は「思考することで身に付けた言葉」「説得力のある意見を主張することが可能」という部分が明らかに誤り。2と3は飛ばして、4の選択肢は「思考を通じて新たな言語を獲得」「良好な人間関係を保つことが可能」が明らかに誤り。ということで、1と4はさっさと切り捨てることが可能です。2の選択肢の「思考の手段として主に言葉を用いる」は問題ありません。次の「本に書かれた内容や表現を通じて感銘を受ける言葉に多く触れ」は、「感銘を受ける」がやや言い過ぎですが、まだ妥協できます。しかし、最後の「言葉の力により豊かな感情を身に付けることが可能」という部分はいただけません。そんなこと本文では述べられていませんし、そもそも、「豊かな感情を身に付ける」は「思考の活性化」とは言えません。3の選択肢の「思考の手段として言葉を用いる」「読書により他の思考を知ることで多くの刺激を受け」「より深く考察することが可能」は全く問題がありません。3の選択肢を選ばなかった子は、おそらく「それ以前とは異なる視点からものごとをとらえる」のところに引っ掛かったのではないかと思います。とはいっても、3以外の選択肢の誤りが分かりやすかったので、易しいです。
問四 説明的文章では鉄板の対比関係を判断する問題です。アとイに入る言葉がマイナスの意味、ウとエに入る言葉がプラスの意味だと気づけば簡単です。「反射的」がどちらに入るか迷った子もいるかもしれませんが、それ以外の三つをきちんと判断すればよいので、易しいです。
問五 「一人で行動することはむしろかっこいいこと」である理由の記述問題。昨年の記述は割と広い範囲からキーワードを拾い集めていかなければなりませんでしたが、今年は狭い範囲の内容のまとめでしたので、ほとんどの受験生が何かしらの記述を完成させることができたかと思います。指定語句の「自信」は、傍線部の2行前にありますが、それをそのまま「自信がない」と答えてはいけません。一人で行動できる人についての説明なので、「自信があり」や「自分に自信をもち」などの記述をしなければなりません。それほど難しくありませんが、配点が4点もあるので、ここで0点は厳しいですね。普通。
大問一の(1)では、難しい問題はありませんでした。記号で答える問題は昨年よりもやや難易度は上がりましたが、それ以外は昨年よりも解きやすかった印象です。
大問一 (2)漢字・語句問題
問一 【下書き】の根拠を探す問題。「一人はかっこ悪い」などの表現などから、Eを答えるのは難しくありません。易しい。
問二 「孤独」の読みです。だれが間違うのでしょうか? 易しい
問三 「意識改革をはかる」の「はかる(図る)」と同じ漢字を用いるものを選ぶ問題です。センター試験のような問題ですね。この場合の「図る」は、「物事を企てる」という意味になります。1は「体重を量る」、2は「気持ちを量る」、3は「決着を図る」、4は「時間を計る」ということで3が正解です。漢字が書けなくても、意味から想像できたかと思います。普通。
問四 「時」という文字の部首に表れている行書の特徴を選ぶ問題。部首が「日」の部分であると判断するのは容易です。それから4の選択肢を選ぶのもそう難しくありません。易しい。
問五 【ポップの下書き】に見られない工夫や修辞技法(レトリック)を選ぶ問題。1の呼びかけはわかりやすいです。3の倒置は下書きの最後に見られます。4の字の大きさは見ての通りです。2の比喩と5の対句はありませんので、この2つが正解になります。易しい。
これまでにない出題がありましたが、どれも決して難しくありませんでした。間違うとしたら問三ぐらいでしょうか。
●大問二
文学的文章は今年も小説でした。今年は王道の重松清です。塾にも重松清の作品は9冊置いています。今回出題の『バスに乗って』は、『小学五年生』の一編としておさめられている話です。塾にもこの作品は置いていましたので、読みたい方はぜひお読みください。本の中には下にような挿絵がありました。少年が恐る恐る河野さんから回数券を購入している場面でしょうか。
問一 「表紙を兼ねた十一枚目の券」を言いかえた表現を抜き出す問題。最後の券だとわかれば、抜き出すのは容易です。易しい。
問二 単語分け。これが今回の問題で1,2を争うぐらい正答率が低い問題ではないでしょうか。いやー、私もまさか単語分けが出るとは思っていませんでした。文節分けならあるかもとは思っていましたが、単語分けについては1%たりとも思っていませんでした。これは反省です。ちょうど春期講習の新中1の国語では文節分け・単語分けを扱う予定です。そこから受験は始まっているのだという話をしようと思います。問題に戻ると、多くの受験生が「必死に」の段階で終了しています。そこを乗り越えても、「噛んで」「我慢した」でやられています。「必死に」の品詞を聞かれたら形容動詞と答えられるのに、「必死/に」と分けてしまうのは、私の指導が不足していたといえるでしょう。難しい。
問三 文挿入問題です。文挿入問題は何となくでもできてしまいますが、対策をしていると確実に判断ができるようになります。文挿入問題に限らず、国語ができない子はいきなり本文から探し始めます。そして、設問部分の分析をおろそかにしてしまいます。この問題では、挿入するべき「窓から見えるきれいな真ん丸の月が、じわじわとにじみ、揺れはじめた。」という一文を読み込むことから始めなければなりません。私が解説授業するならば、おさえるべきポイントは2つです。1つ目は「窓から見える」という描写です。これがあることにより、少年はすでにバスに乗っていることがわかります。2つ目は「月が、じわじわにじみ、揺れはじめた」という箇所です。ここで涙を流しかけていることがわかります。以上の2点を満たす場所はBとなります。普通。
問四 少年の心情についての対話文を読んで答える問題です。
(1) 少年が何に不安を抱いているのか抜き出す問題。答えとなる箇所がやや遠いですが、この文章の重要場面からの抜き出しでしたので、分かりやすかったかと。普通。
(2) 「また感謝かよ!」と突っ込んだ受験生がいたことでしょう。易しい
(3) 見えなくなるバスに対して、少年はどのようなことに寂しさを感じているのか記述する問題。授業で口すっぱく言っていますが、「記述解答はまず結論」です。少年は「バス」自体に特別な思いがあるのではなく、「バスの運転手である河野さん」に思いを抱いています。はじめは河野さんを嫌がっていましたが、最後には「目が合わない。それがちょっと残念で」「回数券に書いた「ありがとうございました」」などの記述から、河野さんに特別な感情を抱いていることがわかります。これらを踏まえ、解答の後半は「河野さんが運転するバスににはもう乗れない」「バスを運転する河野さんに会うのは最後である」などの内容を入れなければなりません。前半には、「もう乗れない」の理由にあたる「母が退院をしたので」などの説明をつけます。この問題のように、「結論を述べて理由をつける」パターンは福岡県の入試では鉄板です。過去問をやり込んでいれば、なんてことありません。やや難しい。
昨年は時代背景や言葉遣いなどが、中学生にとって分かりにくいものでしたが、今年は圧倒的に読みやすくなっています。単語分けのところは苦しいですが、それ以外は例年並みといったところでしょうか。
●大問三
やはり今年は古文が出ました。「達人と未熟者のちがい」という、どこか見覚えのある文章です。ほとんどの受験生は平成30年の問題を解いているでしょうから、話の展開は分かりやすかったはずです。昨年に引き続き、現代語訳がついていました。
問一 現代仮名遣いに直す問題。「づ→ず」、「さう→そう」です。福岡の入試において、「au→ou」の変換を私は初めて見ました(かなり前に出題されているかもしれませんが、20年分を振り返っても出題はありませんでした)。易しい。
問二 「物の上手」の説明。空欄の直前の「未熟な者」と対比する語句を書きます。「名人」「達人」「名手」などでしょうか。平成30年を解いた受験生にとっては楽勝だったはず。やや易しい。
問三 「あのやうに」が表す具体的な部分を抜き出す問題。傍線部の直前の「あれ」「これ」はすべて同じ部分を指しています。字数の指定はありませんので、間違えて「本の白さぎ」や「本の白さぎが四五羽」までしか抜き出さなかった受験生もいたことでしょう。設問には、「何がどうする様子か」とわざわざ書いてくれています。残念ながら、注意力不足です。易しい。
問四 対話の空欄をうめる問題。アとイは絵かきの「下手芸」である点を記述する問題です。アの方は、ある人の「こんな羽の使い方はありえない」という指摘に対して、絵かきが「この飛び方がいいんだよ」と返したところに注目し、「他人の指摘を受け入れない」などと答えます。イの方は、本当の白さぎの飛ぶ姿を見て、ある人が「あんな風にかいてください」と言ったことに対して、絵かきが「あの羽の使い方では私の絵のようには飛べない」と返したところに注目し、「自分の誤りに気付かない」などと答えます。ウはおごり高ぶるという意味の「慢心」を知っていれば簡単ですが、知らなければできません。やや難しい。
現代語訳がついたことで楽になりました。話自体も分かりやすかったです。問四は対話の流れから自分で抽象的な表現に変えなければならないため、苦戦したでしょうか。
●作文
ここ数年、作文は複数資料が出ますので、十分な対策は積んできたでしょう。第一段落は、共感できる人物とその理由を書けば終わりです。かなり書きやすいです。第二段落は、第一段落を踏まえて、自分にできることを書きます。ただ、「資料2のA~Cのいずれか一つを関連づけて」という部分が書きにくかったかと思われます。難易度としては、例年通りです。大きく傾向の変化があったわけではありませんので、上位層の受験生であれば、ほとんど満点を取ってくるでしょう。中下位層の受験生も、ここでどれだけ稼ぐかが重要です。
昨年との難易度比較は以下の通りです。
大問一(1) 昨年並み
大問一(2) やや易しい
大問二 やや易しい
大問三 昨年並み
大問四 昨年並み
※大問一(1)は昨年の大問二との比較です。他も同様です。
個人の感想として、昨年よりも解答となる箇所が見つけやすかった印象です。昨年の国語の得点率が60%でしたので、今年はやや上がると思います。問題形式は変わっていましたが、いつも通りに問題と向き合えたでしょうか?