毎年、受験対策が本格化すると、受験生には福岡県の公立入試の対策法を伝えていきます。一般に広く流通しているやり方もあれば、毎年の入試問題分析の末にたどり着いたものもあります。その中でも理科の対策は簡単です。今回は理科の対策について、ごく一部ですが書いていきます。
「理科嫌い」という生徒は一定数います。しかし、それは正確には「理科の食わず嫌い」だと思っています。つまり、やってみる前から「何となく難しそう」「何となく面倒くさそう」という理由で手を付けていないだけなのです。福岡県の公立入試5教科の中で、最も簡単で、最も点数をとりやすいのは理科です(反論は受け付けません)。毎年あれほど簡単な問題が出題されるにもかかわらず、50%をわずかに超える得点率にとどまっています。それは理科嫌いからくる勉強量の不足です。これから受験生は受験勉強が本格化してきます。受験生の中には、「理科はもうあきらめて、他の科目に力を入れよう」と考えている子もいるかもしれません。しかし、それははっきり言って愚策です。理科の切り捨ては、愚策以外の何物でもありません。
なぜ理科を捨ててはいけないのか。その理由は大きく2つあります。1つ目は、理科の入試問題を解くのに求められる知識量にあります。各教材会社から出されているテキストを見比べてみるとおもしろいことが見えてきます。各テキストの一問一答のページを見てみると、社会は問われる語句に違いがあるのに対して、理科は同じような語句ばかりが問われています。これが意味するところは、社会は習得するべき知識が多いため、各教材会社ごとに掲載する問題に違い(いわば教材会社の個性)が生まれるのに対し、理科はそもそも習得するべき知識量が少ないために同じような問いばかりが並んでいるということです。1日1単元ずつ勉強しても12日間で終わります。1週間で1単元ずつ勉強しても3か月で終わります。覚えることは少ないといっても、考えるべきことはかなりあります。しかし、それはここ最近の入試の傾向から見ると、理科に限定した話ではありません。理科以外でも面倒な読み込み、厄介な分析が必要です。それであれば、知識量の少ない理科にきちんと取り組んで、手っ取り早く得点を確保しておくことに損はないのです。
もう1つの理由は、入試問題の再登場率の高さにあります。理科では同じような問題が繰り返し出題される傾向にあります。特に福岡県の理科は、奇をてらった問題ではなく、典型的な実験・観察をもとにした問題であるため、どうしても過去の入試とのかぶりが出てきます。したがって、「過去問を完璧にしておけば、ある程度の点数が取れる」ということになるのです。
今年の3月に行われた入試問題も、私からすると既視感しかないというものでした。例えば、大問1の問1「葉をあたためたエタノールにひたす理由」を答える問題は、平成26年度の問題でそっくりそのまま出題されています。大問2の問4「意識して行われる反応と反射の反応時間に差が生まれる理由」を答える問題は、平成15年度、平成21年度、平成26年度と、ここ20年間で3回も出題されています。さらに、大問6の問2「北極星の位置がほぼ変わらないように見える理由」を答える問題も、平成14年度、平成20年度、平成28年度と3度出題されています。これ以外にも、BTB溶液の色を答える問題は20年間で4回、星の位置と時刻の問題も過去4回、凸レンズの作図の問題は過去3回、道管・師管を選ぶ問題も過去3回、銅と酸素の反応も過去3回出題されています。今年度の入試問題のうち、ここ20年分の問題とかぶっている問題(同じ語句・同じ記述・同じ計算を問う問題)が何と42点分もあります(かぶっていない18点分のなかにも、用いている実験は同じ問題やこれまで問われなかった基本語句を答える問題があります)。60点のうち、これまで全く触れたことがない問題は1~2問程しかありません。それ以外の圧倒的大多数の問題は、学校の教科書そのまま、あるいは過去問ですでに問われているものです。理科は同じことが出題される可能性が高いにもかかわらず、早々に諦めてしまうのは残念としか言いようがありません。書店に行くと、さまざまな市販教材が目をひきますが、最終的に頼るべきは過去問です。理科の対策のやり方が分からないという受験生は、過去問を完璧に解ける状態を目指しましょう(ちなみに、当塾でどの程度過去問を使用するかは科目により異なります。理科は過去問を多用しますが、英語や社会は数年分しか解かず、別のより良い教材を使用します)。
7月後半から、今年度の受験対策教材の選定を行っています。入試の傾向、生徒の学力、志望校をふまえて、「これしかない」という教材を選びます。ここ数年で社会の傾向が変わってきたので、今年は例年以上に社会の教材を充実させるつもりです。本格的な入試対策が始まる9月に向けて、これから1か月かけて絞り込んでいきます。