2024年7月27日
  • 須恵町にある高校受験専門学習塾

2020年度 福岡県公立高校入試分析④(理科編)

入試問題分析の第4弾です。「福岡の入試において、最も高得点を取りやすいのは理科である」というのが私の持論です。それでも点数が取れないということは、理科の勉強の仕方がマズいということでしょう。理科や社会の受験勉強は中1から始まっていますので、中3から本格的に取り組んでも遅いですよ。

      

理科は公立入試前に「予言の書」というものを書きました。

封印されし「理科」の予言の書(前)

封印されし「理科」の予言の書(後)

今年の入試で出題される問題を予想しました。どれくらい当たっているのかどうかも振り返ってみましょう。

     

生物分野では、「遺伝の規則性」と「消化と吸収」が出ると予想しました。一体どうなったのでしょうか。

●大問1

光合成を調べる実験問題。超基本的な実験問題が出題されました。平成26年度入試とほぼ同じ問題です。割と新しい年度なので、解いた受験生も多かったでしょう。しかし、昨年と同じ「光合成」を出してくると誰が想像したでしょうか。正直私は全く考えもしませんでした。そういうこともしてくるようになったのですね。これは対策が難しくなりそうです(きちんと全範囲を勉強しておきなさい、ということですね)。ただし、昨年の実験よりも難しさも分かりにくさも感じなかったはずです。

問1 エタノールのはたらきを記述する問題。ヨウ素液による色の変化を見やすくするために、葉を脱色します。平成26年度も同じ記述がありました。これは易しいです。

問2 葉の部分の比較より、光合成を行うためには何が必要かを考える問題。AとCの違いは「緑色の部分の有無」、AとBの違いは「光の有無」であることを読み取る。比較するときには、「条件を1つだけ変える」が基本です。易しい。

問3 光合成によってつくられた養分のゆくえについての問題。道管と師管の位置を間違えているようでは、合格なんてできませんよ。全解ですがこれは易しいです。

      

●大問2

刺激に対する反応に関する問題。刺激と反射もまた平成26年度に出題されています。今年の入試の隠れたカギは、「平成26年度の問題を解き、完璧に理解したかどうか」かもしれません。

問1 まわりの刺激を受けとる部分を答える問題。単なる一問一答ですが、意外に答えることができない語句です。易しい。

問2 けんが骨のどこについているのかを選ぶ問題。「けんは関節を飛び越えた骨についている」は基本です。易しい。

問3 意識と関係なく起こる反応を表す語句と、その反応の例を選ぶ問題。「反射」の例として「ひとみの大きさを変える」というのも基本ですね。易しい。

問4 通常の反応が、反射よりも時間がかかる理由を答える問題。「反射のほうが時間が短くなる理由」を記述される問題のほうが多いですが、今回は「通常の反応のほうが時間がかかる理由」が問われました。「せきずいから脳に伝える」だけでは不十分です。反応に関する問題は「どこで判断・命令するのか」を述べるのがポイントです。普通。

生物分野は大問2題とも大外ししてしまいました。来年の受験生にとっては予想がしやすくなったともいえるでしょう。

      

化学分野は「物質の分類」「酸・アルカリ・中和」を予想しましたが、どうだったのでしょうか。

●大問3

銅と酸素の化合に関する実験からの出題。平成29年度にも出題されているので、抵抗は少なかったかもしれません。

問1 ガスバーナーの操作方法を問う問題。空気量を増やすために動かすねじと、動かす向きを答えます。易しい。

問2(1) 加熱後の質量から、一定量の銅と化合する酸素の質量には限界があることを説明する問題。加熱回数が増えると、いずれ質量が増えなくなることを述べます。易しい。

問2(1) 加熱後の皿に残っている未反応の銅の質量を求める問題。質量比の計算は苦手な子が多いところです。C班において、完全に酸化すると全体の質量は20.05gになるはずですが、2回目の全体の質量は19.97gしかありません。本来化合するべき酸素0.08gがまだ結びついていません。これは、0.08gの酸素と化合するだけの銅が未反応で残っているということでもあります。グラフより、銅と酸素の質量比は4:1なので、未反応の銅は0.08×4=0.32(g)あると求めるのが最も簡単なはずです。しっかり練習して、やり方を習得していないと、入試本番でいきなりうまくいくことはありません。どうしようもないときには、見なかったことにする。そして確実に取れる問題をおさえていく。入試本番では「見切りをつける」というのも必要です。難しい。

問3 銅と酸素が化合する化学変化の化学反応式を答える問題。銅、酸素、酸化銅それぞれの化学式を書き、それから係数を調節します。易しい。

     

●大問4

塩酸と水酸化ナトリウムを用いた中和実験に関する問題。これまた平成26年度で同じような問題が出題されました。

問1 BTB液を加えたときの色を答える問題。塩酸を加えて中性になる前の液なので、アルカリ性だと分かり、青色と答えます。ただし、問題の手順を1発で理解するのは難しいです。私も最初に読んだときに「どういうこと?」となりました。やや易しい。

問2 塩酸と水酸化ナトリウムの反応において生じる塩の化学式を答える問題。中和の代表的な実験なので、NaClと即答できたでしょう。易しい。

問3 塩酸と水酸化ナトリウムの反応における水のでき方を答える問題。水素イオンと水酸化物イオンが結びついて水ができます。易しい。

問4 ビーカー内に存在するイオンをモデルで表す問題。B液を6mL加えると中性になるところ、半分の3mLしか加えていないことに気づきましょう。アのビーカーにナトリウムイオンを1個、水酸化物イオンを1個加えた状態をモデルで表します。ただし、モデルで考えると訳が分からなくなるので、中和反応はイオン式で考えるのが大切です。水素イオンと水酸化物イオンは結びついて水になるので、残るイオンは水素イオン1個、ナトリウムイオン1個、塩化物イオン2個となります。平成26年度にもモデルを用いて表す問題が出題されています。難しい。

化学分野は「酸・アルカリ・中和」が当たりました。ここまで1勝3敗です。

      

地学分野は「雲のでき方」「星の観察」が出ると予想しました。ひょっとしたら「地震」が出るかもしれないとも書いていました。

●大問5

雲のでき方を調べる実験問題。フラスコにつないだピストンをひいて雲をつくるというよくある実験です。まさに予言の書の中にも書いてあった「注射器を用いた雲をつくる実験」です。

問1 雲をできやすくするためにフラスコ内にしておくことを述べる問題。水蒸気を凝結しやすくする(凝結核にする)ために、線香の煙を入れておきます。普通。

問2 ピストンをひいたときの様子を答える問題。ピストンをひくことで気圧が下がるので、ゴム風船はふくらみます。露点に達すると、水蒸気が凝結して水(水滴)に変わります。地上付近で凝結したものを霧といいます。すべて基本ですね。易しい。

問3 ピストンを引いて、露点に達するまでの間のフラスコ内の湿度について記述する問題。湿度は単なる割合なので、気温が下がり、分母である飽和水蒸気量が小さくなれば、湿度は高くなります。記述のしかたが少し難しいかもしれません。やや難しい。

    

●大問6

星の観察に関する問題。中3の最後に学習する単元なので、演習量は不足しているかもしれません。問題自体は基本的なものばかりです。

問1 1日の間で動く、星の見かけ上の運動を表す語句と、その運動がおこる理由を答える問題。よく「日周運動」と「自転」を反対に答えてしまう子がいます。易しいです。

問2 北極星の位置がほぼ変わらない理由を答える問題。これも基礎レベルの記述です。北極星は地軸の延長付近にあるので、位置が変わらないように見えます。易しい。

問3 星の問題といえば、日周運動による位置の変化と年周運動による位置の変化の合わせ技問題は外せません。北の空なので、星は反時計回りに動きます。星は、地球が公転することで1か月に30度動いて見えることから、1月20日の午後10時はaの位置に見えます。それをXの位置で観察するためには60度時間を戻さなければなりません。星は1時間に15度動くので、60度動くには4時間かかります。これより午後6時を導きます。難問ではありませんが、きちんと段階を踏んで求める必要があります。普通。

地学分野は、どちらも予言通りの出題となりました。

       

物理分野は、「電力・電力量・熱量」と「物体にはたらく力」が出ると予想しました。大穴として「凸レンズ」も警戒していましたがどうだったのでしょう。

●大問7

凸レンズによる像のでき方を調べる実験。これも平成26年に出題されました。

問1 凸レンズを通って、スクリーン上に映る像として適切なものを選ぶ問題。スクリーンに映る像(実像)は、上下左右が逆に映ります。易しい。

問2 凸レンズBの焦点距離を求める問題。XとYの値が同じところに注目できたでしょうか。30cmを2で割って15cmと導くのは難しくありません。悩むのはその前にある空欄です。「凸レンズAを用いた実験で」とあるので、凸レンズAの結果から考えなければなりません。私は「(XとYが)等しくなるときの値は、焦点距離の2倍である」と書きましたが、出題の意図を考えると、やはり模範解答の説明が適切ですね。難しい。

問3 凸レンズを通った光の進む道すじを作図する問題。凸レンズの作図の基本は「凸レンズの中心を通る道すじをかけ」です。その線が行きつく先に、それ以外の道すじを合わせていきます。おそらく光軸に平行な線をかいた受験生が多かったことでしょう。普通。

    

●大問8

電熱線に電流を流したときの水の温度変化を調べる実験。受験生が嫌がるところを出してきました。個人的な意見ですが、あまり対話文形式である必要性を感じません。対話文形式にするのであれば、対話の流れを把握しなければ適切に答えることができない問題を出してほしいですね。

問1 回路図を見て、実際の実験装置を選ぶ問題。ややこしいですが、電流計・電圧計、+極・-極のつなぎ方を確かめましょう。易しい。

問2 電力と水の上昇温度の関係をグラフに表す問題。点がきれいに直線上に並ばないので焦ったかもしれません。落ち着いて点の間を通るような直線を引きましょう。また、発生する熱量は何に比例するのかを記述しなければなりません。「電力の大きさ」は自分でグラフをかいたのですぐにわかるでしょうが、もう1つの「電流を流した時間」は気づきにくいでしょうか。やや難しい。

問3(1) 電熱線の発熱量と水が得た熱量の差を求める問題。それぞれ求めてひき算をします。電熱線の発熱量は4(W)×300(s)=1200(J)で、水が得た熱量は4.2(J)×100(g)×2.5(℃)=1050(J)です。差を求めて150(J)となります。普通。

問3(2) 接している物体の間を熱が移動する現象を答える問題。「接している物体の間」における熱の移動なので伝導(熱伝導)です。易しい。

問4 白熱電球とLED電球の消費電力の違いに関する問題。電球は、電気エネルギーを光エネルギーに変えます。同じ明るさであれば、変換効率の高い(余計なものに使うエネルギーが少ない)LED電球のほうが、消費電力は小さくなります。易しい。

物理分野はどちらも予想していたものからの出題でした。今年の出題予想は、5勝3敗でした。まあこんなところでしょう。

      

全体的な難易度は昨年とそれほど変わらない印象です。予め知識を習得し、基本的なパターンの解法を身に付けておかなければやはり苦しいですね。はじめにも言いましたが、中1の4月から受験勉強は始まっているのですよ!

        

       

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