2024年7月27日
  • 須恵町にある高校受験専門学習塾

技術と人間の倫理

人間の科学技術は、だまって放っておけば、自然のバランスそのものを破壊する可能性を秘めている。自然そのものに内在するバランスによって、これまでは人間性のあり方そのものが規定されてきた。自然のあり方に対する科学技術のあり方が変わることで、この人間性と科学技術の関係は、改めて問いなおされなくてはならない。

科学技術と人間との関係について、基本的に三つの立場がある。第一の立場は、肯定的な立場である。科学技術は、すばらしい。今後も、科学技術を限りなく進歩させていかなくてはならない。第二の立場は、否定的立場である。科学技術は、恐ろしい。科学にこれ以上の進歩を許してはならない。第三の立場は、限定的立場である。科学技術は、すばらしいとともに、恐ろしい。今後開発される技術を用いれば、人類はさまざまな困難に解決を与えることができる。だから科学技術を開発することは今後も続けなくてはならない。しかし利用を制限することが大切である。どのようにすぐれた技術も無制限の利用は許されない。利用のための倫理基準が必要だ。人類が地球の上で生き残るには、第三の道を選ぶほかにないのではないだろうか。

     

これは加藤尚武の『技術と人間の倫理』の一部です。中2の国語テキストにもこの文章が掲載されています(中2生はそのときにじっくり読みましょう)。幼い子供が犠牲になる事故を目にするたびに、心痛が絶えません。多くの方も同じ思いでしょう。自動車を操ることで、私たちは利便性・快適さ・時間の短縮を手に入れましたが、その裏には命の危険・環境破壊などが隠れていることを忘れてはいけません。これは自動車に限らず、世の中に存在するもののほとんどには表面と裏面があります。友人関係にも、ゲームにも、部活にも、学習塾にも、良い面と悪い面があります。「良いことしかない」なんてものは存在しないでしょう。大事なのは、その両面を理解したうえで選択することです。そして、必要であれば制限し、行き過ぎを防ぐことです。自分で(もしくは親が)コントロールできないのであれば、自分もしくは他人にダメージを与えることにもなりかねません。なにより自動車を運転する以上、自分と他人の命を握っていることは忘れてはいけません。

       

さて、最近はS中学校の定期考査対策についていろいろと考えています。定期考査において注意しておくべき点がいくつかあります(保護者の方は学校から配布されたプリントを隅からすみまで完全に理解できるまで読み倒すのがよいでしょう)。

近年の入試では「思考力・判断力・表現力」を問う問題が増えているということは聞いたことがあるかもしれません。それは事実なのですが、それに惑わされてはいけないという事もまた事実です。たとえば、低学力層の子が須恵高校や商業系・工業系の高校を目指すのであれば、やるべきことは「思考力・判断力・表現力」を鍛えることではなく、ひたすら知識を身につけることです(取れるところを落とさないということです)。中上位層であっても、思考するためには知識は欠かせません。つまり、定期考査において「自学ノート」に書いておけば点数が取れてしまうようなことが受験では必要だというわけです(そして、他の中学の生徒は自学ノートに頼らず、自分の頭に叩き込んでいます)。プリントに書いているように、日ごろから語句や単語を暗記してほしいと思っているのでしょうし、言うまでもなく、中学校の勉強の大半は暗記です。「覚える」ということからは逃げることはできません。覚えるのが嫌だからという理由で、「自学ノート」を見ながら写すようなことをし始めると、ろくな学力は身につきません(学力が身につかないにもかかわらず、高得点がとれてしまうのではないかという懸念がありますが、そこは差がつくように考えているのでしょう)。あと、「自学ノート」に学習したことを生かすような問題も出題しますとありますが、それはどんな問題なのかを、個人的に楽しみにしています。単元末や小テストの頻度などにも注意しておくべきでしょう。おそらく、知識・技能の部分については小テストなどで確認していくのでしょうから、それでクラス間に差が出ないようにしてほしいものです。

    

「学力分析テストなども評価に加わります」とありますが、これは大丈夫なのかなと思います。学力分析テストは、1つの中学校だけでやっているものではないはずですし、そのための対策も難しいはずです(学力分析テストの前には3日間の試験休みを設けるようですが、それで何を勉強するのでしょうか。そしてなぜ学力分析テストだけは休みがあるのでしょうか。ここに何か怪しさを感じますね。また、勉強範囲を指示することによって、実力以上の結果を取れてしまうことはないのでしょうか)。学校の先生が作る定期考査や小テストが評価の対象になるのは当然として、「学力分析テスト」まで評価に加わるのはどうも違和感を感じてしまいます。

      

個人的にイヤなのは自学ノートを1冊にまとめるという点です。複数の教科の自学を1冊のノートにさせているから、知識の整理ができていない子が多いのではないかと思ってしまいます。「分ける」というのは当たり前のことです。社会に出れば、項目ごとに経費や書類を分けるのは当然です。それらをごちゃ混ぜにすることはありません。これからは知識を体系立てて整理しやすくなるノートづくりも大事になるのでしょう(というよりも、ノートを持ち込み可とするのであれば、単純に自学ノートではなく、授業ノートを持ち込みにすればいいじゃないかと思うのは私だけでしょうか)。

     

個人的には、「俺は自学ノートなんていらないよ。実力一本で勝負してやるぜ!」という塾生が表れてほしいと思っています(私が中学生であればそうするでしょう)。まあとにかく条件はみんな同じなので、あとはどれだけ油断なく勉強に取り組めるかです。間違いなく、大多数の中学生はノートを見ながら解ける定期考査が楽勝だと思っているはずです(基本的に子どもたちが喜んだり歓迎したりすることは、良くない結果を招くことが多いです)。世の中そんなに甘くありませんし、先生方もノート持ち込みによるマイナス面は十分わかっているはずです。そのうえでテスト問題をつくるはずなので、これまでのテストとは全く違うものになるのでしょう(それは配布されたプリントにも書かれていますね)。多くの保護者の方、子どもたちがまだまだ懐疑的な目で見ているでしょうから、中学校にはそれを払拭してほしいですね。中学校の新しい取り組みは大歓迎です。時代も入試も変わっているのですから、現状維持で過去と同じことばかりを続ける方が時代錯誤です。あとは、細かなところまで注意を払って、中身がスカスカにならないようにしていただきたい。教育の結果は子どもの将来にそのまま反映されるのですから。

     

※定期考査については、きちんと実施されてからまた言及しようと思います。行われてもいないことにあれこれ言っても仕方がないので…。実際の試験問題や得点分布などを見て考察するつもりです。

       

      

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