入試問題分析第3弾は理科です。先日の国語と社会の分析も多くの方が見ているようですが、いったい誰が見ているのでしょうか。大して面白い内容ではないですし、そもそも入試問題が手元にないと何のことを言っているのかすら分からないはずです。「入試分析」というタイトルをつけてはいますが、内容はただの一塾講師の感想です。難易度や解説など全くもって個人的見解ですので、批判・意見等は一切受け付けておりません。客観的かつ正確な分析をお望みの場合は、もっと大人数で分析しているであろう大手学習塾の分析結果をご覧ください(分析結果を出しているのかは不明ですが…)。もし受験生が見ているのであれば、ここに書かれていることに対して、「えー、あの問題簡単なの?」とか「基本って書いているけど、見たことないよ!!」と一喜一憂する必要はありません。なぜなら、そうしたところで何も変わらないからです。受験生はこんな分析見る必要はありません。不安なのはわかります。特に試験本番に手ごたえのなかった受験生はなおさらでしょう。でも、高校受験を終えた今、「早く始めることの重要性」を実感しているはずです。遅くなればなるほど苦しくなるのを体感したはずです。であれば早く次のステージへの一歩を踏み出してください。さあ、今すぐこのページを閉じて、スタディサプリのお試し登録をして、高校内容の先取りをしましょう。英語と数学の勉強をさっさと始めましょう(私は決してスタディサプリの回し者ではありませんが、スタディサプリの高校授業は先取り・復習に有効だと思いますよ)。
さて、出題予想を立てやすい理科でしたが、果たして予想は合っていたでしょうか。はたまた、難易度はどうだったのでしょうか。構成は例年通り大問8題でした。各大問ごとに見ていきましょう。
大問1は植物での光合成の実験でした。昨年が蒸散実験でしたので、今年は光合成が出るのではないかというのは予想通りです。問題の難易度としては普通。
問1:対照実験についての問題。対照実験は条件を1つだけ変えることで、結果の変化がその条件によって生じたことを確かめます。「BTB液の色の変化はオオカナダモのはたらきによって生じた」と書きたいところですが、今回は「光」という語句を使うように指示されていますので、「光だけではBTB液の色の変化は生じない」とまとめなければなりません。やや難でしょうか。
問2:初めに息を吹き込んだことにより増えた二酸化炭素は、オオカナダモの光合成によって消費され、息を吹き込む前の状態に戻っていきます。難易度は易ですが、この実験におけるBTB液の色の変化を考えるのが苦手な子は多いですね。
問3:光合成によって酸素ができるのは基本です。酸素であることを確かめる方法も簡単です。特別な実験をやっているように見えてしまいますが、なんてことないただの光合成の実験です。
大問2は生殖・遺伝でした。この単元はそれほど難しい問題が出ません。遺伝の規則性に関する問題が出ると予想していたのですが、結局、生殖の出題でした。中3で最近学習した単元でもあり、覚えることも少なく、簡単な問題が多いので全問正解したいところです。
問1:減数分裂を答える問題。とても簡単。生殖細胞の染色体数は、体細胞の染色体数の半分です。だから減数分裂です。以上。
問2:有性生殖。簡単。以上。
問3:カエルの発生の順序を問う問題。細胞数に注目して並び替える。もう一つは、問題文を冷静に判断して、「胚」と書く。図で勘違いして「発生」と答えないように。簡単な問題が続きますね。
問4:「有性生殖では、親から半分ずつ遺伝子を受け取ることで、子の遺伝子の組みあわせは、両親と異なることがある」という基本問題。頭では分かっていても、記述できない子が多いです。指定語句も「両親」だけなので正答率は下がるでしょうが、いたって普通の問題。
大問3は水溶液に関する問題です。再結晶が出るのは予想通りでした。前半は簡単、後半は差がつく問題で、誘導はあるものの面倒な問題が出てきます(基本的に私は面倒くさい問題が好きなんでしょう。全国入試を解いていても、平易で既視感たっぷりの問題には嫌気がさしてきます。生徒にも面倒くさい問題を解かせたいと思ってしまいまうのが悪い癖…)。対話文を読んだり、記述が複数あったりして、正解率は下がるでしょうか。というよりも、昨年はすべての大問に記述問題がありましたが、今年は記述が偏っていますね。
問1:水溶液の粒子モデル。簡単。
問2:ろ過の操作方法を選ぶ問題。これは簡単。また、ろ過で固体を取り出すことができる理由を答える問題も基本です。ここまでは確実に確保しておきたいです。
問3:グラフを見て再結晶や濃度について考える問題。
(1)は物質Aのグラフで縦軸の40gを下回るときの横軸の温度を読み取ります。基本かつ簡単ですが、グラフの読み方が分からない子が多いところです。
(2)は物質Aのグラフの横軸の20℃に対応する縦軸の質量を読み取ります。基本かつ簡単ですが、グラフの読み方……(以下省略)。ただし、対話文を正しく読まないと、別の値を書いてしまうかもしれません。
(3)は水溶液の温度を下げたときの濃度の変化を記述する問題。溶媒である水の質量は変化せず、溶質である物質Aが徐々に取り出されます。水に溶けた溶質が減っていくと、濃度は下がります。基礎的な知識をもとにして、実験を判断・分析しなければなりません。この問題のように、典型パターンの記述ではなく、そのときの状況やようすを判断してまとめるような記述問題は実力がハッキリと出ます。いい問題です。
(4)の問題は11月の県模試で同じ記述問題が出ていました。入試問題では物質Bが塩化ナトリウムだとは書かれていませんが、溶解度を見ると塩化ナトリウムなのでしょう。塩化ナトリウムだと分かっていれば、「水を蒸発させる」と答えやすかったかもしれません。知らなかったらその場で考えるのはなかなか難しいでしょうか。思考力の差、経験値の差が出る問題です。
大問4は塩化銅水溶液の電気分解です。ごくごくありふれた典型的な問題です。もっとも簡単な大問ではないでしょうか。中3の学習内容は全体的に簡単な気がします。昨年が電池だったので、今年は中和が出ると思っていましたが、電気分解でした。福岡県では中和実験が出ないですね…。
問1:塩素は漂白作用があります。中1でも中3でも学習します。また色は黄緑色。以上。
問2:金属光沢。簡単。以上。
問3:塩化銅の電離のようすを表す式は間違いが非常に多い問題です。塩化銅の化学式、銅イオン・塩化物イオンのイオン式を覚えていれば、あとは数合わせだけです。化学反応式も、電離のようすも、暗記しようとするのではなく、その場でつくることができるように準備しておきましょう。間違う生徒は多いですがいたって基本です。
問4:エタノールと砂糖は非電解質。簡単。以上。
大問5は火山です。基本的な知識を問うています。昨年が地層だったので、今年は地震がくるのではないかと思っていましたが、火山が出てきました。
問1:鉱物の特徴を問う問題。セキエイ、チョウ石の区別までは覚えていても、カンラン石、カクセン石まではチェックしていなかったかもしれません。今回の問題でいちばん「そこ聞くか!!」という問題でした。ちなみにカンラン石の名前の由来は、「カンラン」という植物で、その植物の色のように緑色をした鉱物だからカンラン石だったはずです。そもそも「カンラン」という植物に馴染みがないですが…。
問2:岩石の色は、有色鉱物と無色鉱物の「割合」に左右されます。感覚として分かっていたとしても、この言葉が出てこない子も多いでしょうか。。
問3:マグマのねばりけと火山の形についての問題。マグマのねばりけが強いので、盛り上がった形の火山なります。基本ですね。昨年、ハワイのキラウエア火山が噴火したときに、ニュースでマグマが流れいく映像を見たことがあるでしょうか。キラウエア火山は高くそびえていなかったはずです。知識と見聞の経験をつなげておくと最強です。だから、ユーチューブだけでなく、今のニュースにも興味を持ちましょう。
問4:火山の多い日本において地熱発電はポテンシャルを秘めた発電方法ですが、発電コストの高さと用地の不足などの要因で進んでいないのが現状です。火山があれば、観光に活用したいと思うでしょうし、もし温泉でも出れば、発電所よりも温泉施設をつくりたいと考えるのは当然だといえるでしょう。この問題は、問題作成者からこれからを生きる受験生の皆さんに向けての、「将来のエネルギーについて考えてください」というメッセージだと勝手に解釈しています。
大問6は日本の天気で、予想通りの出題です。季節ごとの4つの図が並んでいるのも全く予想通りでした。知識だけだはなく、その知識を使って分析・判断しなければならない問題がいくつかあります。難易度としては、普通でしょうか。
問1:季節による雲のようすを考える問題。6月は梅雨前線が東西にのび、8月は小笠原高気圧が日本列島をおおい、12月は大陸からの季節風が吹きつけます。基本です。
問2:停滞前線の記号を選ぶ問題。停滞前線の成り立ちを知っていれば暗記しておく必要なし。簡単。以上。
問3:等圧線の間隔が狭い地点ほど風が強い。簡単。以上。
問4:大陸と海洋のあたたまりやすさの違いと季節風の向きの関係を問う問題。冬のある日に暖房の効いたショッピングセンターの中に入るとき、空気によって体が後ろから押されるはずです。これは冬の屋外の冷たく収縮した空気が、ショッピングセンター内の暖かく膨張した空気に向かって移動するからです。この問題では、気圧の高い冷たい地点から気圧の低い暖かい地点に空気が移動するということを説明しなければなりません。指定語句の「気温」「気圧」の「高い・低い」について正確に説明しなければならないので、やや難しいでしょうか。
大問7は電流回路の問題です。回路自体はシンプルですし、値も計算しやすかったです。ただし、思考力を問う問題がいくつか含まれていたので、やや難しく感じたかもしれません。正解率の低い大問ではないでしょうか。
問1:電流計、電圧計、抵抗、電源装置を適切につなぐ問題。簡単です。
問2:「比例」なので、模範解答通り「原点を通る直線」と書くべきでしょう。また、抵抗の大きさは、グラフの値から求めます。比で計算してもいいですが、どうせ次の問3で抵抗の大きさが必要になります。両解なので正解率は下がるでしょうね。
問3:問2で求めた抵抗の大きさを使って、並列回路に流れる電流の大きさを求めます。それから電流と電圧の大きさを使って電力の計算をします。単位も書かなければならないので、基礎知識がないと苦しいですが、問題としてはいたって普通。電流回路の総合力を問う問題でした。
問4:模範解答には2つの例が載っていますが、2つ目の「どの電気器具にも同じ電圧が加わる」の方が受験生にとってはなじみがあるのではないでしょうか。正解率は低い。
大問8は自由落下運動のようすの観察です。仕事の計算が出ると予想していたので、自由落下とはやや驚きました。難易度としては普通で、この単元を苦手にしている子にとっては、難問が出なかった分、傷口が最小限で済んだかもしれません。
問1:力の図示です。力の矢印を書く問題は、焦らずに、問題文を吟味して、作用点、向き、長さを判断しなければなりません。簡単な問題ですが、勘違い・読み間違いのミスもかなりあったでしょう。
問2:前半は、長さと時間から各区間の平均の速さを求める問題。これは簡単。後半は、自由落下運動では、同じ向きに同じ大きさの力がつねにはたらくので、速さのふえ方が同じになることを答えさせる問題です。空欄に入る「ふえ方」以外の語句を思いつきません。国語力も影響するでしょうか。全解なのでやや正解率は下がるか。
問3:自由落下における、時間と移動距離を表すグラフを選ぶ問題。イメージすれば分かりますし、面倒くさいですがテープの長さをたし算すればすぐにわかります。難易度は普通。
全体的な理科の難易度は昨年並み~やや易ではないでしょうか。昨年よりも簡単だという意見が割と多いようですが、個人的には大きく易しくなったという感じはしません(ただしトップ校受験者は上位に固まるでしょう)。福岡県の理科は基本的な問題、基本的な実験ばかりですので、下手にテクニックに頼らず、基本に忠実に、理屈をベースに勉強していれば、確実に高得点が目指せます。いまや、5教科の中で最も点数を取りやすいのは理科だと思います。これから新しく中学に入学する小6生の皆さん、理科を毛嫌いすることに何らメリットはありませんよ。中1生、中2生の皆さん、たとえ中1・中2の理科がボロボロであっても、たとえ中1・中2の土台が欠けていたとしても、学年間の内容のつながりが薄い分、中2・中3の学習内容への影響は限定的です。つまり、中2、中3から横並びで再出発しやすいということです。少なくともこれから学習する内容に関しては十分習得できる教科なのです(一方、数学や英語は土台がないと苦しいです。前学年までの内容が欠けていると、ふさぐ努力をしない限り、いつまでたっても穴だらけのざるに水を注ぎ続けることになります)。もちろん、前学年までの知識がないことは足かせにはなりますが、そんなものは自分の努力ひとつでどうにでもなります。この春から理科を仕切り直して勉強していきましょう。