2024年12月12日
  • 須恵町にある高校受験専門学習塾

2019年 福岡県公立高校入試分析①(国語編)

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今回からは、昨日行われた公立高校入試問題の分析を行っていきます。例年よりも簡単だったという感想が多いようですが、どうだったのでしょうか。まずは国語から見ていきましょう。「そういう考えもあるんだ」ぐらいでお読みください。

        

国語は昨年と同じく大問5つの構成でした。これは想定内ですね。各大問における小問数も同じでした。ただし、昨年よりも現代文における記述にやや難しさを感じたかもしれません。逆に、訓練を積んだ生徒にとっては日ごろの練習の成果をいかんなく発揮できる、つまり満点も十分目指すことができる問題だったでしょう。毎年恒例の「国語は時間が足りなかった」という受験生も多いようですが、このレベルの問題で時間が足りないというのは完全に演習不足、知識不足、技術不足です。国語はそもそも勉強しない子が多いですが、それはちょっとやそっと勉強しても目に見える結果が表れないからでしょう。それゆえ、勉強することに意味や目的を見いだせないのでしょう。しかしながら、読解の経験値を積むことで、読解に必要な知識や技術、あるいは典型的な問題パターンも習得することができます。それが問題を解くときの正確さ、的確さ、スピードにつながります。「時間が足りなかった」と言ってしまえば、その原因がまるで「試験問題の難しさ」にあるように思えますが、それでは根本的な問題は何も解決しません。試験問題の難易度など誰もコントロールできませんし、ましてや予め知ることなどできないからです。それならば、変えられないものを嘆くのではなく、自分の気持ち次第で変えられるもの、つまり自分の学力、能力を高めることに意識を向けるべきです。「時間が足りなかった」のではなく、「時間内に解けるようになるまで、自分の国語力を高めることができなかった」と言う方が正しいのではないでしょうか。これは今年の受験生ではなく、来年以降の受験生に対するメッセージです。国語力は、国語力を伸ばすための勉強をすることではじめて伸びていくのです。前書きが長くなりましたが、大問ごとの分析に入りましょう。ちょっとした解説も入れています。

       

大問1は漢字・語句・文法に関する問題でした。配点は昨年同様9点です。「満点取ってください」という簡単な問題のオンパレードです。まるで数学の小問集合のようです。

問1:「没頭」の読み。サービス問題です。

問2:「働き」の品詞を選ぶ。転成名詞は頻出なので、これも問題なし。

問3:「貢献」の類義語選択で、単純な語彙の問題。「寄与」しかありませんし、その他の選択肢「介入」「躍動」「直結」が全く違うので簡単に選べます。

問4:「将来への明るい見通し」という意味の語句。「将来への-」の部分が抽象的なので一瞬迷います。「○○の光」というヒントから「希望」を導く。大問1の中でいちばん正答率が悪くなるのではないでしょうか(ただし難しいわけではない)。

問5:「開」の画数の問題。簡単。

      

大問2は説明的文章で、配点は昨年同様12点でした。どんなテーマが来るのかと思っていたら、まさかの昨年と同じく、日本vs西洋の比較文化に関連した文章でした。昨年は、欧米の住居が自然と分離しているのに対し、日本の住居が自然と一体化しているという内容でしたが、今年は、欧米人が個人主義なのに対し、日本人は人との関わりを大切にしているという内容でした。日本人、日本社会がつながりを重視するというのは、現代文読解の基本の「キ」です。昨日の夜の段階では入試でどんな文章が出たのかを全く知りませんでしたが、昨日の中1の授業でも「日本はつながりを重視する」という全く同じことを話しました。ちなみに、昨日扱った文章ではつながりを表す語として、「親和関係」「親しい関係」「結合性」「親しみ」「コミュニケーション」「結びつける」「血縁」「地縁」「きずな」「コミュニティ」「人間関係の調和」「社会的」が登場してきました。これらの語を追っていくだけで、対比構造は容易に掴むことができます。はっきり言って、昨日中1が解いた問題よりも読みやすく、設問の難易度も低い入試問題でした。また、今回の文章でキーワードとなった「個人」は、「社会」と対比させて使われることが多いのも基本知識です。このような語句の意味や文章の中での使われ方を知らなくても問題は解けますが、知っていればより短時間で確実に自信をもって解答をつくることができます。では小問ごとに見ていきましょう。

問1:空欄の当てはまる語句を抜き出す問題。昨年は自分で内容をまとめる問題がありましたが、今年はすべて抜き出しで、さらに空欄の前後を見ればすぐに判断できる問題だったのでかなり簡単になりました。空欄1つあたり2点で、それが3つありますので、ここを正解するだけで6点も確保できます。大サービスです。対策を練った子からすると、肩透かしを食らった感は否めませんね。

問2:「学校教育の場」と「かつての日本型経営」に共通してみられる日本人の考え方を、60~70字以内でまとめる問題。ようやく、実力を発揮できる問題が来た!!という感じでしょうか。点数差がつくところです。設問に、「共通して見られる」とある点と日本人の「考え方」とある点に注意しなければなりません。何よりもまず「設問」を正確に読むことは入試の鉄則です。もし仮に、「学校教育の場」だけに見られることを述べたり、あるいは「考え方」ではなく「行動」を結論に持ってくるようなまとめ方をすると減点は免れません(ただし、予め解答欄に「…という考え方。」という文言が与えられていますので、後者でのミスはそれほど考えられません)。傍線部の直後の内容を入れ込むことは分かるでしょうが、60~70字なので、それでまだ足りません。次の段落は「これは」という指示語から始まりますので、直前の内容が次につながっていくことが分かり、次の段落を見ると「そうした場が」と再び指示語が登場し、そこと内容を結びつけることになります。「指示語を正確に捉える」という読解の基本を使えば難しくありません。ちなみに、「これは、~ではない。~でもない。そうではなく、…」という構文は超重要です。否定を重ねて、自分の意見を強調しているので、「…」の部分が問題にかかわるのは必然と言ってもいいでしょう(このような読解において絶対に意識して読まなければならない部分は、授業中にしつこく説明しています。ちなみに昨日の中1授業では「~して初めて…」の重要性を説明しました)。この60~70字の記述問題を完全正解しても3点しか与えられず、問1の一瞬で解ける超簡単な問題の6点と比べると、なんとも得点効率の悪い気はしてしまいます…。

問3:文章の特徴を選ぶ問題。本文中に書かれていることだけを正解だとし、書かれていないことに惑わされないことが重要です。選択肢を分割して〇✕を判断するのが基本ですが、今回は1発で4が正解だと判断できるでしょう。もし消去法で判断すれば、1は「後半で現代の課題を指摘」、2は「相手の立場を取り入れることで、書き手の考えを広げている」、3は「はじめと終わりに主張を繰り返し述べる」が明らかに✕となります。いずれにしても、基本的な選択肢判断の問題でした。

       

大問3は文学的文章(小説)で、配点は昨年同様12点でした。記述解答が多く、解答根拠が少し離れた位置にありますので、昨年よりも難しくなっています(昨年の問題が簡単だったということもありますが…)。今回の文章は小川糸の『リボン』という作品で、これは6年ほど前に出版されたもののようです。文章の展開自体は、昨年の『リーチ先生』同様、中盤で気持ちの落ち込みがあり、終盤で前向きになるというもので、決して裏切りがあるわけではありません。では、小問ごとに見ていきましょう。

問1:同じ表現技法が使われている文を選ぶ問題。そもそも傍線部の表現技法である擬人法が判断できない受験生も多かったかもしれません。擬人法だと分かれば、1の選択肢はすぐに選べます。すべての選択肢に「みたいに」「まるで~のようだ」「~ような」と直喩を入れ込んでいるのがいやらしいので、私も一瞬「あれ?」と思ってしまいました。冷静に判断しなければならないという意味では、知識と分析を要する問題でした。

問2:「奇跡」の具体的内容を答える記述問題。「おいで!こっちだよ、戻っておいで」が最大のヒント。記述問題ではありますが、それなりのことを書けば〇がもらえるであろう問題です。ぜひとも正解したい問題ですね。

問3:「少し肌寒い風が吹き始めた」という表現によってもたらされる効果を選ぶ問題。1、4は明らかに違うのですぐに消去でき、2と3までは簡単にしぼれます。2はそれっぽい答えですが、それが正解である根拠がないので✕です。3が正解ですが、これを選ぶためには「少し肌寒い風が吹き始めたので」の「ので」の部分がポイントです。風が吹き始めたことが原因、きっかけで中に入ったことを示しています。また、風が冷たくなることで、時間の経過も示しています。

問4:リボンの「成長」の内容を答える問題。普通、「成長」の内容を問う問題では、精神的な成長を答える場合が多いのですが、今回は身体的・肉体的な成長を答えなければなりませんでした。中学生の中には、小説のまえがき(あらすじ)を軽視する子も多いのですが、この問題に関してはあらすじにヒントがありました。「ようやく生まれたヒナ」という部分です。半年前は生まれたばかりのヒナであったにもかかわらず、今は立派な風切り羽で大空を羽ばたいている、そのことが成長だと考えているのです。また、もともとは生まれて半年をお祝いする予定であったのが、リボンの門出、つまり大空への出発をお祝いすることになったという変化も意識しておくべきです。解答の根拠となる箇所を見つけることは難しくありませんが、「~という成長。」につながる形にまとめるにはやや技術が必要となります。

問5:この問題が、今年の入試問題でいちばん難しいかと思います。この問題が難しい原因は2つです。1つは、「リボンは、生きている。これから先も、生き続ける。」という部分が、肉体的な生よりも、心の中での精神的な生のことについて述べていることを読み取るのはなかなか難しい点。もう1つは、解答の根拠が離れている点です。多くの受験生は、「リボンはきっと、空のどこからか、必ず私とすみれちゃんを見守ってくれている」という部分を中心にまとめたかと思われます。ただしそれではあまりに簡単すぎるという違和感が生じたじはずです。すぐに解答を決め打ちするのではなく、「ちょっと待てよ」とストップをかけてほしいですが、時間制限のある入試で前に戻って読み返すというのはなかなか難しいでしょう。だからこそ、はじめて文章を読むときが大切なんです。この問題を解くときのヒントは2つで、1つは、きちんと「私」の気持ちが示されている部分を探すこと、もう1つは三者の関係性やその強さが示されている部分を探すことです。とはいっても、みんながスッキリする、納得できる問題かと言われれば、そうではない気がします。あとは、各学校で採点基準をどう設定するかでしょう。

        

大問4は古典で、配点は昨年同様12点です。出典は『沙石集』、内容は孝行に関するもので、よくあるテーマでした。個人的には、昨年の方が難しかったです。毎年平均点の低い古典ですから、苦手な子は解きやすかったかもしれませんね。

問1:「養ひけり」を現代仮名遣いになおす問題。サービス問題です。

問2:(1) 元啓の行動を抜き出す問題。簡単です。

(2) 語句の組みあわせを選ぶ問題。簡単です。

(3) 空欄に入る内容を記述する問題。文章中の「我父を捨てば、また我を学びて、我が捨てられん」の部分を現代語訳すればよいです。あとは、記述を分かりやすくするために、「元啓が」や「次に」、あるいは「私が年を取ったら」などのことばを補います。本文と対話文の照らし合わせが重要です。

問3:元啓が「孝孫」と呼ばれた理由を記述する問題。10~20字なので、簡潔に書けば十分です。「孝孫」は孝行をする孫という意味なので、いったいどん孝行な振る舞いをしたのかを考えます。「父」と「祖父」が指定語句として与えられているので、それほど難しくはありません。「祖父」の方は問題ないでしょうが、「父」の使い方に悩んだ受験生もいたかもしれません。

        

大問5は作文で、配点は昨年同様15点でした。今年は、「幼児とのふれあい活動」がテーマでした。それには何かしら、出題意図があるのでしょう。昨年のキャッチフレーズを自分で考える問題に比べ、今年は幼児にどんな言葉をかけるかだったので、書き出しやすかったと思われます。第一段落は「具体的に」という条件が与えられているので、そこは気をつけなければなりません。第一段落さえ書ければ、第二段落は資料に書かれてあることをほとんどそのまま使うことができるので難しくないでしょう。

      

小説は難化しましたが、それ以外はやや易~普通というところでしょう。また、昨年の大問数や出題傾向の変化を受けて、対策が進んでいることも考えられますので、平均点は上がるのではないでしょうか。というよりも、上がっていないと「福岡の受験生、何を勉強していたんだ」という感じです。

      

想定以上に国語の分析の分量が多くなってしまいましたが、次の科目からはもっと簡潔にまとめようと思います。とにかく国語について言いたいことはただ一つです。やはり、日ごろの勉強の積み重ね、知識の積み重ねに勝るものはないということです。受験生になってから付け焼刃のように実力を付けたとしても、それは少し試験問題が難しくなったり、傾向の変化があったりすれば容易に崩れていきます。どんな問題にも通用する真の実力を身につけようと思えば、それなりの時間や数が必要なのです。だから、国語も勉強してください。

        

       

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