2024年12月11日
  • 須恵町にある高校受験専門学習塾

歴史の知識は重要、でも・・・

中3の社会は第一次世界大戦から指導しています。塾によってはいきなり公民に入るところもありますが、青凜館では大正時代以降の歴史を終えてから公民に入ります。理由は二つあります。一つは第一次世界大戦以降というのは入試にも頻出であり、なおかつ子どもたちが最も苦手にするところだという理由です。それら頻出単元を放り出して、進度を優先するのはいただけません。もう一つはそもそも公民から始めなければならないほど、進度が切迫していないということです。よほどほかの科目のほうが先を急ぎたいと思っています。そんな焦りを押し殺しながら、淡々と進めていっています(中3はただでさえ内容が難しいのに、受験があるので進度を設定するのは大変です)。

 

この時期、歴史を教えていると、毎年同じような場面に遭遇します。「第一次世界大戦の勃発により、日露戦争後から続いていた不景気から脱却することができた。」と授業すると、「え、日露戦争で不景気になったんですか?学校はそこまで進んでいないので知りません。」と返ってきます。また「1919年、朝鮮では日本からの独立を訴える、三・一独立運動が起こった。」と授業をすると、「日本からの独立って、それまでに何があったんですか?そこまで行っていないのでよくわかりません。」となります。ひどいときには中3の最初の段階で「明治維新」を教えている中学校もありました。ほとんどの塾用教材は第一次世界大戦から始まっており、もちろんそこから授業をするため、子どもたちの中には「空白の歴史」というものが生まれてしまいます(最低限、小学校で学習するような基本中の基本ぐらい入っていると助かるのですが、それさえなければもうどうしようもありません)。学校の先生も、塾の先生も、社会科を教える人というのは歴史好きが多い印象を受けます。地理や公民はあっさり指導するのに、歴史になると細かいところまでしつこく指導する塾の指導者を数多く見てきました。歴史について話したいことがたくさんあるのでしょうが、結果的に3つの単元のバランスが崩れることになります。確かに3つの中で暗記の要素が強く見られ、出題パターンも限定的で、勉強する分伸びやすいのは歴史です。費用対効果という面では、最も優れているといえるでしょう。しかし裏を返せば「プロの指導」というものが最も入りにくい分野でもあるといえます。単なる知識の暗記である程度点数が取れてしまうので、極論を言えば、テキスト一冊渡して「これを完璧にしなさい」でも済んでしまいます(当然ですが必要十分な指導は行います)。

 

実は地理や公民こそが学習塾の真価が問われる単元なのです。この二つの単元、特に地理は現在の入試において完全に思考力重視となっています。単純な知識を答える場面は限定的で、多くはグラフや表を読み取る、ある現象の理由を考察するというようなものです。それはここ数年の福岡県の公立高校入試を見れば明らかです(福岡県に限らず、多くの都道府県では「地理」の難易度が上がっています)。もちろん歴史を学ぶことは重要です。子どもたちには歴史の知識のない大人にはなってほしくありません(とくに中学校で学ぶ、近現代史の基本的な流れというのは一般常識です)。でも塾での指導では歴史にウェイトを置きすぎるのは危険です。「当然知っておくべきことを学ぶこと」と「受験で点数を取ること」を分けて考える必要があります。そういう意味で塾の限られた社会科の指導においては、後者を優先するほかないのです。歴史はあまり深入りせずに、重要なポイントを確実に押さえていく、地理・公民はポイントを押さえることと深く考えることを同時並行で行っていく。こうすることで3つの単元のバランスが整い、失点を防ぐこととなるのです。

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