2024年7月27日
  • 須恵町にある高校受験専門学習塾

数学のはなし

青凜館の塾生はことごとく数学が苦手です。いや、本人は「数学が苦手だ」という意識はほとんどないでしょう。定期考査でも8割前後は取れているし、もっと苦手にしている子は周りにいるわけなので、たいして危機感は持っていないかもしれません。それでも今のままでは入試ではうまくいっても半分の点数しか取れません。そもそもこの地区は数学が苦手な子が多くいる地区です。それは学力調査の結果を見れば明白でしょう。身の周りの子と比較することは全く意味がないどころか、不必要な安心感を生みかねません。なぜこんなに全国、あるいは福岡県の他の地区と差があるのかを考察するのは別の機会にして、現状「数学が苦手」という事実をどう変えていくのかを考えなければなりません。

 

勉強において「具体と抽象の往還」という考え方は重要です。このブログでもこの話は何度もしてきています。特に数学においてはこの作業を行えるか否かが成績を左右するといっても過言ではないでしょう。

 

少し例を挙げながら説明していきましょう。まずは例題①を見てください。

例題①:5%の食塩水800gに8%の食塩水を混ぜて6%の食塩水をつくりたい。8%の食塩水を何g混ぜればよいか。

これは一次方程式を利用する問題です。まず割合(%)が出てきただけで拒否反応を示す子がいますが、それはひとえに小学校時にきちんと勉強してこなかったという負の遺産です。何事も初めにつまづくとどうしようもありませんので、今取り戻せるよう必死に理解しましょう。さて話は戻りますが、このような問題が出たときに問題をじーっと眺めるだけで手を動かそうとする子が多いのですが、そういう子は伸びていきません。経験を積んだ大人であればこのくらいの問題は容易に立式できますが、経験の少ない子であれば図やグラフなど視覚化して考えていくべきです。この問題であればビーカーを書き、そこに水を入れ、800gと5%を書くのです。そうすれば、この問題に書かれていない情報、つまり「食塩の質量」というものが見えてきます。悩んだときに分かっていることを書き込んで、視覚情報をもとに「具体的」に考えていくことが重要だということです。では例題②はどうでしょうか。

 

例題②:1冊130円のノートを何冊か買おうとしたが、持っていたお金では300円不足するので、1冊115円のノートを同じ冊数だけ買おうとしたが、まだ135円不足した。ノートを何冊買おうとしたか。

この問題のポイントは、ノートの冊数をx冊としたときに、「130x+300」とするか、「130x-300」とするかを間違いやすいということです。先日のブログ「何となくの繰り返し」でも同様のことを書きました。こういう問題で迷ったときには、文字式で考えるのではなく具体的な数字で置き換えてみるといいでしょう。ノートの合計金額が1500円で300円不足するということは、所持金が1500-300=1200円だとすぐにわかります。文字は数字を抽象化したもので、数字は文字を具体化したものだという認識は重要です。小学校はほとんどが数字の世界です。高校になると文字を中心に考えることが多くなります。その中間にある中学生で文字と数字を上手に結びつけなければ、高校数学についていけず、「数学が苦手だから文系に進む」というなんとも簡単な進路を決定することが多いのです。

 

例題③:駐車場に1周360mのトラックがある。このトラックをAは走って、Bは歩いてスタート地点から同時に出発してまわることにした。2人が反対方向にまわると72秒後に出会い、2人が反対方向にまわると120秒でAがBをちょうど1周追い抜くという。AとBの速さをそれぞれ求めなさい。

Aの速さをxm/秒、Bの速さをym/秒とおいて連立方程式をつくります。ポイントは72秒後に出会う、120秒後に1周追い抜くということが「一体どういうことなのだろう?」と考えることです。この「一体どういうことなのだろう?」と考え、必要な式で表す作業は「抽象化」だといえます。一つ目の式は72x+72y=360になるのですが、これの両辺を72で割ってしまえば、x+y=5となり、72秒後という具体的な事象は消えてなくなっています。同様に二つ目の式、120x-120y=360も120で割るとx-y=3となり、120秒後という具体性は消えてしまいます。このように具体的な問題から要素を抜き出して抽象化することで解答を導くという作業が数学の難しいところであり、楽しいところでもあるのです。

 

文章を書くときに、「具体と抽象」を交互に記述するというのは簡単かつ有効な方法です。「・・・例えば、・・・つまり、・・・例えば、・・・つまり・・・」というように、内容をつなげていくという方法です(もちろん接続詞は変えます。接続詞は使わず展開していくのもいいでしょう)。国語の作文で「私はこの経験からとても大事なことを学びました。」という結びを書く子がいるのですが、こんな抽象的な表現には何の説得力もありません。「それは・・・」と具体的な内容を記述してこそ「思いを伝える」ということが成立するのです。

 

はじめに述べたように、この地区の子は数学が苦手です。「具体と抽象」を行き来することが下手で、どちらかに偏って考えてしまうようです。偏ったものを、もとの本来あるべきバランスに戻すというごくごく基本的なことを、初めのうちは徹底して行っていく予定ですので、そのつもりで授業に臨んでください。

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