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国語の文章読解の出来は、「読む」ことでほぼ決まります。文章を正しく読むことができれば、問題を解くこと自体にはそれほど苦労しません。ここでいう「読む」とは日本語が読めるという意味ではありません。書かれている語句の意味が分かるということとも違います。そうではなく、「論理」や「因果」をつかみとることを意味します。これらを正確に把握できることがすなわち「文章を読める」ということなのです。
ただ、むやみやたらに文章の文字面を追っていても、内容は入ってきません。学校の朝読書なんかは、文字面ばかりを追いがちになります。問題を解くわけではないので、なんとなく全体のあらすじが分かれば満足だからです。さらに、一定の生徒にとって朝読書の時間は、決められた数分間を消費するだけの無機質なものとなっていることでしょう。せっかく読んだ本であるにもかかわらず、内容が思い出せないのはそのためです。
正しく読むためには、2つのものが必要です。1つ目は、語彙力。言葉の意味や使い方を知っているということです。文章に自分の知らない言葉がいくつも出てくれば、正しく読むことが難しくなります。それに加えて、読む意欲もそがれていきます。知らない言葉がいくつも出てくれば弱気になってもおかしくありません。語彙力は、普段どんな言葉を使っているのか、どんな言葉を聞いているのか、どんな言葉を見ているのかを見事に反映しています。言葉の量は、生まれてからこれまでに蓄積させた財産ですので、これからすぐに大きく増えることはなく、地道に増やしていくしかありません。言葉を増やすのにお手軽なものが読書です。読書週間のある子とそうでない子の作文を見ると、その違いは明らかです。読書によりプロの作家が書いた文章に数多く触れることで、言葉の使い方や文章の書き方を自然と吸収しているのです。
もう1つは、読解のルールを知っていることです。「論理」や「因果」を把握するための引き出しをもっているかどうかで、読み方は大きく変わります。ルービックキューブに挑戦したことがある方は分かると思いますが、バラバラの面をむやみやたらに感覚で動かしていっても完成には到達しません。一面をそろえようと動かしても、他の面がバラバラになり、またほかの面をそろえようとしても、せっかくそろえた面が崩れていきます。ルービックキューブには、「こんな配置だったら、こう動かす」というような、ある種のパターンやルールが存在します。それを分かって動かすのと、とりあえず動かしてみるのとでは、完成にかかる時間も、精度も、労力も、何もかもが異なります。実は、国語の読解も同じで、正しく内容をつかむためのルールが存在するのです。そのルールにあたるのが、指示語や接続詞、具体-抽象関係、対比関係などです。
以下の文章は、先日ある授業で扱った文章です。まずは読んでみてください。
スズメが群れをなして鳴きながら食事するのには、二つの理由がある。
第一は、泣き声によって、仲間のスズメにえさのありかを知らせることができる、スズメたちのにぎやかな声を聞きつけて、他のスズメたちも食事にありつけるのだ。
第二の理由は、天敵に対する警戒に関係している。普通に考えれば、一羽で食事をした方が、天敵に対して警戒しやすいようにも思える。ところが実際には、ネコや人が接近してくると、スズメたちは急に鳴きやむのだ。チュンチュンと、あれほどにぎやかに鳴いていたのに、突然鳴きやんでしまう。シーンと静寂になることが、周囲への警戒心をひときわかき立ててくれる。
さて問題です。スズメは鳴くことでどんなサインを送っていますか。「仲間に( )を知らせるサイン」の( )にあてはまる言葉を、文章を参考にして5字以上10字以内で2つ書いてみてください。
1つは簡単です。「仲間に(えさのありか)を知らせるサイン」と書けばいいでしょう。問題はもう1つの方です。間違いで多いのは、「仲間に(天敵に対する警戒)を知らせるサイン」や「仲間に(周囲への警戒心)を知らせるサイン」というものです。確かに、「第二の理由は、天敵に対する警戒に関係している。」とあるように、スズメが鳴くという行為と天敵に対する警戒には、何かしらの関係はあります。では、スズメは鳴くことで「天敵がいるから警戒しろよ!」と伝えているのでしょうか。それは違います。「実際には、ネコや人が接近してくると、スズメたちは急に鳴きやむのだ。」とあるように、スズメは天敵が近づいてくると、鳴くのではなく鳴きやむのです。ここに「対比」があることに気づきますか。スズメが、「鳴く」⇔「鳴きやむ」というところです。スズメは天敵が近づいてくると「敵がいるから気をつけろ!警戒しろ!」と鳴きやみます。では、その逆にスズメが鳴くということは何を表していますか。ここまで説明すればもうお分かりでしょう。スズメは鳴くことで、「敵がいないから大丈夫だ!」というサインを送っているのです。つまり、答えは「仲間に(敵がいないこと)を知らせるサイン」とすべきなのです。
現代文読解において、対比は基本の「キ」とでも言うべきルールです。にもかかわらず、多くの子が対比を意識せずに読んだり、あるいは対比そのものを知らなかったりします。対比を理解せず、ただ文字面だけを読んでいる子は、先ほどのスズメの問題は解けません。「鳴くことで、敵がいないことを知らせている」という記述自体は本文に登場せず、答えを導くためには対比を見抜く必要があるからです。読解のルールを知らない原因の大半は、読解のルールを教わっていないことにあります。であればそれを教えるのが学習塾の役割です。対比関係をはじめとして、さまざまなルールを知っておくことで、文章を正しく理解し、正解に着実にたどり着くことが可能となるのです。