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福岡県の公立高校入試の説明的文章では、ここ4年間連続して、《本文の内容や論理の展開》の説明のうち、適当なものを選ぶ問題が出題されています。それでは、間違いの選択肢にはどのようなタイプがあるのでしょうか。
まずは、童謡の「森のくまさん」を例に考えていきます。
ある日 森のなか くまさんに 出会った 花咲く 森の道 くまさんに 出会った くまさんの いうことにゃ お嬢さん お逃げなさい スタコラ サッササのサ スタコラ サッササのサ ところが くまさんが あとから ついてくる トコトコ トッコトッコト トコトコ トッコトッコト お嬢さん お待ちなさい ちょっと 落とし物 白い 貝がらの ちいさな イヤリング あら くまさん ありがとう お礼に 歌いましょう ラララ ラララララ ラララ ラララララ |
問題 童謡「森のくまさん」の歌詞について説明した文として最も適切なものを、次の1~4のうちから一つ選び、その番号を書け。
1 お嬢さんは森を通っておばあさんに会いに行った。 2 お嬢さんはくまさんに言われて、逃げざるを得なかった。 3 お嬢さんは「お逃げなさい」といってくれたくまさんに感謝し、お礼をした。 4 お嬢さんは森で出会ったくまさんに逃げるように言われた。 |
選択肢1 書かれていないことを堂々と書いているタイプの間違い
⇒森に入ったことは分かるが、「おばあさんに会う」ことはどこにも書いていない。このタイプの間違いの選択肢は、判断しやすく切る捨てるのが容易。
選択肢2 話が過剰(言い過ぎ)になっているタイプの間違い
⇒「お逃げなさい」とは言われたが、「逃げざるを得ない」は言い過ぎ。本文中に書いていることを過剰に盛っている選択肢なので、どこにも書いていないことを切り捨てるよりはやや難易度が上がる。
選択肢3 因果関係・時系列が破綻し、論理矛盾を起こしているタイプの間違い
⇒くまさんが「お逃げなさい」と言ったことも、お嬢さんがくまさんに感謝したことも間違いではないが、そこに因果関係はない(というよりも、読み取れない)。部分だけを追っていると簡単に引っかかってしまうため、最も判断に慎重さを要する。
選択肢4 主語や態(受動・能動)を変えるタイプの正解の選択肢
⇒「くまさんがお嬢さんに言った」ということは、「お嬢さんがくまさんに言われた」ということ。言っていることは同じで、誤りではない。
このほかにもいくつかのタイプがありますが、それはまた機会があれば。では、実際の入試問題の選択肢を見てみましょう。以下は、平成28年度(2016年度)福岡県公立高校入試問題の大問一問六の選択肢です(本文なしの選択肢のみです)。
問題 本文の内容や論理の展開を説明した文として、最も適当なものを、次の1~4のうちから一つ選び、その番号を書け。
1 筆者は、和歌の歴史を振り返ることで見えてきたふるさとに対する人々の意識を、問題提起を繰り返しながら客観的に分析している。 |
⇒ 誤文。「和歌の歴史を振り返る」が誤りだが、ここで判断できる受験生は少ないと思われる。明確な誤りは「問題提起を繰り返しながら」の部分である。問題提起は全くされておらず、書かれていないことを堂々と書いているタイプの、非常に判断しやすい選択肢である。
2 筆者は、恋人や友との別れを詠んだ歌に着目し、ふるさとは人々にとって温かい絆の残る場所であるべきだと論理的に主張している。 |
⇒ 誤文。この選択肢を切るかどうかで悩んだ受験生は多かったかと思われる。誤りは「温かい絆の残る場所であるべき」という部分。本文では「温かい絆の残る場所として想い起される」としか述べられてらず、「あるべき」とするのは過剰である。
3 筆者は、歌の引用を効果的に行いながら、古代から近代にかけてのふるさとにまつわる人々の意識について時代を追って論じている。 |
⇒ 正解。「和歌の引用を用いている」「古代から近代にかけて・時代を追って」「ふるさとにまつわる人々の意識」いずれも誤りではない。
4 筆者は、近代社会の変化について、具体的に数値を挙げて検証し、都市の変化とふるさとの荒廃に心を痛める人々の姿を描いている。 |
⇒ 誤文。「具体的に数値を挙げて」いる記述はあるが、「検証」しているとまでは言えない。さらに、「都市の変化とふるさとの荒廃に心を痛める」という記述は全くない。もっとも選んではいけない選択肢である。
4年分解きなおしてみて、間違いの選択肢は「書かれていないことを堂々と書いている」ものが多いことがわかりました。であれば解き方は自ずと見えてきます。選択肢を分割し、一つひとつのパーツが本文と合致するのかをチェックすればいいのです。そうして誤りがないものが正解となるのです。文全体の雰囲気で判断する、ある一部だけが合致するからすべてが正しいと判断するというのは、問題作成者がしつらえた落とし穴に自ら歩み寄っていることを意味するのです。