先週実施された定期考査の結果がボチボチ返却されていることでしょう。良くも悪くも自分の実力ですから、しっかり受け止めて、反省して、勉強を続けてください。
さて、以前、「定期考査を考察する①~③」を書きましたが、その続きとして今回は、定期考査と高校入試の違いを考察していこうと思います。
当然ですが、定期考査と高校入試(実力模試)は違うものだと理解ください。子どもや保護者の中には、「定期考査で高得点を取れれば、入試(模試)で高得点を取れる」と信じている方もいらっしゃるのですが、全くもって別物です。そもそも目的が違います。定期考査は通知表の評定をつけるための材料ですので、努力が点に結びつくように作られています。頑張った分だけ点数をあげるというものです。「きちんとワークを解いたのか」「本文の内容を理解しているか」「配ったプリントを覚えたのか」がチェックされます。また、授業で指導した内容ですので、問題数が多く、1問あたりにかける時間が短いために、問題とそれに対する解答(解法)を予め準備したうえで臨まなければなりません。問題と解答をセットにしておくという意味で、これを1:1対応と呼ぶことにします。覚えているか否か、または、瞬時に引き出せるか否かにかかっているのです。先日も紹介した、藤原和博さんの著書『10年後、君に仕事はあるのか?』の中に、「情報処理力」という言葉が出てきます。藤原さんは、「情報処理力」を、狭い意味での基礎学力であり、たくさんのことを覚え、それを思い出せるかどうかを指す言葉として用いています。まさに定期考査は「情報処理力」を問うているのです。
それに対して入試(模試)において1:1対応は通用しません。そもそも入試は不合格者を出すためのものですので、簡単に正解できるように作られていません。同じ学力の子どもたちは同じ学力の高校を受験します。似通った学力層の子どもに明確な差をつけるための問題です。どんな文章、どんな設定、どんな図形が出るかが分かりませんので、その場で必要な道具を判断し取り出して、解答を出さなければならないのです。一昔前に料理の鉄人という番組がありました。与えられたテーマ食材をもとに、料理人同士が即興で料理を作り上げていきます。そこには制限時間があり、最終的には完成した料理の味で勝負が決します。入試も同様で、限られた時間の中で、うまく問題にアプローチし、思索し、自らの解答を提出するのです。
そう考えると、定期考査は餃子の王将のような中華料理店に例えることができるかもしれません。王将のようにメニューが多彩な店では、すべてのメニューを頭に叩き込んで素早く反応しなければなりません。また特殊な注文伝達言語を用いているので、そのときにいちいち戸惑っていては料理の提供は遅れてしまいます。また、料理を早く提供するためには火力が欠かせません。瞬間的な熱量で熱を加えていきます。定期考査において、知識の完璧さ、反応スピード、スタートの爆発力は必須なのです。
定期考査の比較対象はあくまでも同一の中学校の生徒です。それに対して、入試で相対するのは他の中学の見知らぬ人たちばかりです。この中学は学力が低いとか、この中学は評定が出にくいとか、そんなミクロな話は関係ありません。今まで勉強が不足していたのなら、他の人以上に勉強に時間を費やさなければなりません。たった15年しか生きていないのに開いてしまった差は、これからますます広がっていくでしょう。平均点より5点低いということは、5点分学力が劣っているということです。次のテストでも5点低ければ、あわせて10点分の知識が欠如しているということです。早い段階であればどうにかなるかもしれませんが、そのまま放置していればどんどん学力の延滞遅延金が積み重なっていくのです。このことは子ども以上に親が考えなければならないことでしょう。15年で人生の選択肢を狭める理由などどこにもありません。精神的にまだまだ未熟な子どもですから、楽な方、簡単な方に逃げ出すこともあります。そこを大人が厳しさをもって理解させなければならないのではないでしょうか。それが子供の将来を考えるやさしさではないでしょうか。子どもは現在から未来を見ているので、今一つ勉強の重要性を知りません。それに対して大人は勉強の重要性を知っています。子どもにとっての未来から、現在を見ているからです。であれば、大人が勉強の必要性をしつこく指導するのは当然のことなのです。