前回の続きです。ちなみに登場人物は、この2人です。
◆Aさん:定期考査で毎回コンスタントに9割をとれる子
◆Bくん:定期考査では6割にやっと到達する程度の子
ーでは定期考査の具体的な勉強法を聞いていこう。まずはBくんはどんな勉強をしているのかな?
B:ぼくは、まず教科書をノートにまとめる作業をします。特に理科や社会などは教科書2ページをノート1ページにまとめるので、この作業だけで1,2日はかかります。教科書と同じように太文字は赤ペンで書いたり、大事な図表は定規や色ペンなどを使って丁寧にまとめるようにしています。全く知識がないぼくにとって、このまとめの時間は大事なんです。
ーなるほどね。ではAさんはどうかな。
A:私は、Bくんみたいにいちいち教科書の内容をノートにまとめるようなことはしません。だって学校で一度授業を受けているし、そのときにノートもとっているわけだから、全く知識がないのはおかしいでしょう?だから私は、最初から問題演習に入ります。そこできちんと身についていれば解答できるし、知識が不足していれば、そこが足りないところだって気づけます。まずは、自分のできるところと、できないところをふるいにかけるのが定期テスト対策の始まりだと思います。
ーそっか。ノートまとめ(インプット)から始めるBくんと、問題演習(アウトプット)から始めるAさん、本当に対照的だね。
A:基本的に、ノートまとめは問題を解くことから逃げていると思います。問題を解くと、頭をフル回転しないといけないし、できない問題があったときに自分のふがいなさに嫌気がさすことも多々あります。それに引き換え、ノートまとめは、教科書の文言をただ写せばよく、それなりに時間がかかるため、勉強をしている気になります。勉強をしているつもりが、ただの作業になっていませんか?例えば、野球部の子が、野球のユニフォームとバットとボールを買い、野球のルールを覚えたからといって、野球が上達することは絶対にありません。本当に上達したければ、実際にボールを打つという経験をしなければなりません。Bくんのノートまとめ重視のやり方は、ボールを打とうとせずにスタメン入りを目指すようなもので、甚だ残念なやり方だと思います。
B:そこまで言わなくても・・・。でも確かに、問題を解くと「×」ばっかりになるから、その現実から逃げていたのかもしれません。
ーではAさん、問題演習で、できない問題があったとき、どんなことをするのか教えてくれるかな?
A:はい。できない問題があったとき、ただ「×」をつけて終いにしては、次に同じ問題が出たときに、同様の結果になってしまいます。ですので、できない問題が「なぜできなかったのか」を分析するようにしています。できない問題の原因は一つではありません。「単純に知識がなかった」「知識はあったけど、活用法が分からなかった」「問題の意図を読み間違えていた」「計算ミスをしていた」などです。間違いの種類によって異なる対処をすることになります。例えば、単純に語句を覚えていなければ、教科書を読んだり、やり直しノートに間違えた語句と意味を書き残しています。また、知識の活用法が分からなかった時には、いきなり答えを見ずに、まず教科書や授業ノートなどに目を通し、ある程度思い出したところでもう一度解いてみます。それでもできなければ、答えを見て、時間を空けて解きなおします。それでも不安があれば、問題集の類題を見つけて、解くこともあります。
ーBくんは、今の話を聞いてどう思った?
B:間違いに種類があるなんて考えたこともありませんでした。ぼくは、できない問題があったら、すぐに答えを見て、写してしまいます。そもそも「やり直しノート」って何ですか?
A:ワークの問題や模試などでできなかったところを記録しておくためのノートです。何度も同じ間違いをするようなときは、記憶に定着させるためにあえてノートにまとめます。例えば、社会の鎌倉新仏教がごちゃ混ぜになっているとき、そのまま問題演習を続けても非効率なので、まずしっかりノートに整理して、改めて問題を解くようにしています。そうすると、問題の理解度が上がるし、試験の前にはそのノートをチェックすれば、自分の弱点を一目で把握できて、一石二鳥なんです。ぜひBくんもやってみてください。
B:ぼくの場合、ノートが何冊あっても足りないかも・・・。
ーでは、ここまでをまとめると、インプットではなくアウトプットに時間をかけること、間違いの分析をすることが外事だといえるね。
(次回に続く)
※学校の定期考査は3年間で10回以上あります。であれば早い段階で対策の「型」を身につけておくべきです。例えば、ワークは1週間前までに終わらせる、英語の本文の日本語訳だけを見て、英文が言えるようにする、社会や理科の一問一答集を自作するなどです。もし、やり方がうまくいけば継続し、うまくいかなかったときは別のやり方を模索すればよいのです。最もいけないのは、やりもせずに「自分には向いていない」と諦めたり、効果が出ないのに「これが自分のやり方なので」と拒絶することです。定期考査は何度もあります。つまり、何度でも失敗できるのです。1回の定期考査で人生が決まるわけではありません。そもそも世の中に失敗しない人間などいません。定期考査で高得点を取り続けている子であっても、必ず失敗はあります。でも、その子は失敗するたびに振り返ります。「ここがうまくいかなかったから、次回はこうしよう」と反省をするのです。子どもたちは、成功体験だけでなく、失敗と反省をも繰り返しながら、自分の「型」を身につけるのです。