2024年7月27日
  • 須恵町にある高校受験専門学習塾

国語はセンス?

まずは次の文章を読んでみてください。

 

「かつて多くの人が生命を捨ててまで守ろうとした第日本帝国のような幻想的価値を今の日本は国家に付与していなし、子々孫々にわたって永遠につづく家という幻想は色褪せたし、世間という幻想もあまり重んじられなくなったし、近代以降、欧米から輸入した進歩とか理性とかの価値の普遍性も信じられなくなったし、各人各様、それぞれ自分本位のばらばらな小さな限定された価値を信じて生きているように見える。しかも、その信じ方も、終始一貫ずっと信じ続けるとか、全身全霊をもって信じるとかいう信じ方ではなくて、ほかに信じるに値するものもないようだから、今のところとにかくこれを信じておきましょうといった信じ方で、都合がわるくなれば、たやすくほかのものに切り替えることができるかのようである。」

 

これは筑紫女学園高校の国語の入試問題の一部です。中学生でこの文章を一読で理解できる人はほとんどいないでしょう。大人であってもさっぱりという方が多いのではないでしょうか。もちろんこの文章の前後には文脈があり、問題の終わりには注釈があります。それでもこの文章を限られた時間内で理解するのは容易くはありません。

 

《幻想的、価値、国家、付与、子々孫々、色褪せる、世間、重んじる、近代、欧米、理性、普遍性、自分本位、限定、終始一貫、全身全霊、値する、都合、たやすく》

 

これらの言葉を、きちんと理解していますか。何となくで読んでいませんか。わからない言葉を辞書で調べるという至極当たり前の作業を怠っていませんか。

 

青凜館の国語の授業は予習が前提です。その時にわからない言葉、意味が曖昧な言葉があれば調べるのは当然です。子どもたちを「テンプレート人間」にしたいとは思いません。借りてきたような言葉と表現では他を圧倒するような文章を作成することはできません。ケータイ電話を持つのが当たり前になり、電子辞書も普及しているにもかかわらず、子どもたちは「調べる」という作業を怠り、「簡単に」答えを求めようとします。勉強とは、決して華やかなものでも、大きな感動を生むようなものではなく、地味な日々の積み重ねなのです。勉強ができる子というのは、スラスラと問題を解いているように見えますが、根底には膨大な語彙力や知識があるのです。だからこそ「余裕」で問題と対峙できるのです。語彙力は強力な武器です。語彙力のある人間には説得力が生まれます。よって子どもたちには語彙力を高める努力を課しています。

 

また、語彙力とは別に、文章を読むときには最低限知っておくべきベースとなる知識があります。例えば、入試で頻出の「近代化」がテーマの文章であればどのような文脈になると想像できますか。

 

「科学技術の発達により、生活が豊かになった!」

 

という、小学生でも思いつくような単純な話は出題されません。

 

近代化が豊かさを生み出したのは言うまでもありませんが、それと引き換えに自然と分離することとなりました。つまり、自然との共存ではなく、自然の支配です。多くのものが溢れ、価値の多様化する一方、アイデンティティが喪失します。事実、この文章は、「価値の多様化ということが言われはじめてから久しい。」という一文から始まります。近代化に関してはまだまだ知っておくべきことがあるのですが、それはともかく、国語(特に説明的文章)は文章を読み始める前に差が生まれてしまう科目なのです。そして国語は指導者の技量・知識がもっとも成績を左右する科目だといえます。

 

近代化とはいったい何でしょうか。

日本文化と欧米文化の基本的な差異は何でしょうか。

人間が自然の関係性はどのように変遷してきたでしょうか。

豊かさとはいったい何を意味するのでしょうか。

 

子どもたちはこのような質問に答えることができません。なぜなら知らないからです。なぜなら周りの大人が教えないからです。ひょっとしたら周りの大人も答えを知らないのかもしれません。だから青凜館では指導します。「大人が知らないから、子どもも知らない」「大人が教えないから、子どもは知らない」からこそ、それらを学べる環境に身を置くべきです。(ただしあくまでも私が指導するのは、国語入試のベースとなる知識であって、私個人の考えではないということは勘違いされないでください)

 

国語は、センスなどではありません。地道に蓄積させた知識と技術の賜物です。でなければ入試で国語を出題する意味などありえません。文章のベースとなる知識があるだけで、問題の見方が大きく変化します。

 

授業では、一つの問題にたっぷり時間をかけて読み進めます。良質な文章には、時間をかけて味わう価値があるのです。そして、良質な文章というのは、子どもたちの見識を大きく広げてくれるものです。多くの塾で国語が軽視される中、青凜館では国語の授業にこだわって指導します。

 

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