受験生の皆様、お疲れさまでした。やりきったという充実感を感じている受験生もいれば、もっとこうしておけばよかったと悔いている受験生もいることでしょう。自己採点で合否が微妙な点数で、不安で不安でたまらない受験生もいるかもしれません。来週の結果発表までなかなか落ち着かないでしょうが、まずは良くも悪くもここまで頑張ってきた自分を評価しましょう。それと同時に、これまで支えてくれた方への感謝を忘れないようにしましょう。
毎年のことですが、中3の授業が終わると喪失感でいっぱいになります。「受験に必要なことを教え切ったのだろうか」と不安になります。実際の入試問題を見て、自己採点の結果を知るまでは、負の感情で満たされます。細かな分析はこれからですが、5教科をざっと見ると問題形式の大きな変更はないようです。塾生の自己採点の結果も見ましたが、もったいないミスは多少あるものの、壊滅的な得点ではなさそうです。むしろ、過去問よりも飛躍的に正解できており、謎のインフレ傾向に私自身が驚き、そして安堵しています。
さて、今年も入試問題を分析していこうと思います。分析したところで、結果が変わるわけではありません。この問題分析というのは、問題そのものだけでなく、私自身の今年の反省であり、来年以降への課題分析でもあります。人は失敗しなければ、本当の反省をしないものです。それは子どもだけでなく、大人も同じです。私自身も今年の入試問題を通して、反省をし、課題を見つけ、改善を図っていこうと思います。
前置きはほどほどにしてさっそく始めます。今回は国語です。難易度を以下の記号で5段階評価していきます。あくまで個人的な感想ですので、意見・批判は受け付けません。
①→非常に易しい
②→やや易しい
③→普通
④→やや難しい
⑤→非常に難しい
大問1 説明的文章:河合雅司『未来を見る力 人口減少に負けない思考法』より。「エンパシー」「思いやり」「相互理解」など、よくあるテーマの文章といえ、とっつきにくさはなかったでしょう。文章は昨年、一昨年よりは短いです。
問1 接続詞を選ぶ問題。①
問2 異なる品詞を選ぶ問題。「小さな」は連体詞の代表格。②
問3 適当な内容を選ぶ問題。1は「個人の利益を追求」が不適。2は「働く世代の人々に限定」が不適。4は「高齢者同士が自立して助け合う」が不適。すべての選択肢には「高齢者に耳を傾け、困難に理解を示す」的な内容が含まれているので、それ以外の要素での判断となります。迷うとしたら4かな?③
問4 「潤滑油」の働きの説明。答えとなる箇所が直前にあり、なおかつ「滑」という字もあります。「働き」につなげなければならないので、「回る」という自動詞を、「回す」という他動詞に変えなければなりません。③
問5 人口減少の話は前半に登場するので、まずはその部分から考えます。
(1)は「〔ア〕が役に立たなくなる」をヒントに読んでいけば容易に発見できます。③
(2)は「変化」という語句の使い方に苦労した受験生が多かったようです。1行目と6~7行目の内容をまとめます。説明的文章の記述問題は、過去問では文章の後半をまとめることが多かったのですが、今年は前半の内容が中心となっていたので若干戸惑ったかもしれません。④
問6 文章の展開や内容を選ぶ問題。この手の問題を苦手にしている受験生は結構います。「木を見て森を見ず」というのが一番の原因です。つまり、文の一部分だけの印象で正解を判断し、文全体の内容にまで判断が及んでいないということです。1は「シンパシー」ではありません。「エンパシー」であれば内容的には適切なので、この選択肢を見間違って選んでしまった子も多いでしょう。3は「世界の人口や出生数を提示」してはいますが、後半が誤りです。4は後半部分は許容できますが、前半が明らかな誤りです。③
大問2前半 文学的文章:阿部曉子『パラ・スター〈Side 百花〉』からの出題でした。東京オリンピック・パラリンピックに影響を受けたのでしょうか?
問1 脳裏の「脳」が書けるかどうか。「のうり」という言葉を知っていることが前提で、あとは正しい漢字が書けるかどうかの勝負です。②
問2 人称代名詞が指す人物を考える問題。誰が誰に話しているかを考えるという、小学生でも解ける問題。①
問3 百花の頭が真っ白になってしまった理由を答える問題。字数や体言止めという条件が加わった分、やや難しく感じたでしょうか。この問題のように、ふさわしい答えになるように語順を入れかえるのは、その子の経験値(学力・練習量)が現れます。地味に難しいのが、「内なる声に」の「に」を「で」に変えるところです。「に」と「で」では、内容の意味が変わってしまいますので要注意です。そのまま抜き出すのか、意味を考えて工夫できるのか、そこを見ることができるので、個人的には今回の国語でいちばん好きな問題です。④
問4 アとイは対比した内容が入ります。そのためアには「ゆるぎない微笑」を入れなければなりません。空欄直後の「動揺せず、安心して」も答えを絞るためのヒントです。②
ウには百花の「その人が、やりたいことを~私は作りたいです」というセリフをまとめて入れます。模範解答のように「乗る人の望みの実現」とまとめるのはなかなか難しいので、きっとこの部分は広く採点してもらえるでしょう。④
問5 本文の構成や特徴を選ぶ問題。1は「回想と現在の場面を交互に描く」が不適。2は「質問に間髪を入れず答える」が間違い。3は「比喩と反復の表現を多用」が不適。③
大問2後半 資料読み取り・漢字・語句問題:昨年は大問1でしたが、今年は大問2に移動しました。この形式は来年以降も続くのでしょうか?
問1 資料からわかることを選ぶ問題。2の選択肢で悩んだ子が多いようですが、文章中の「手の皮が剝けるまで車いすを走らせ」という箇所から、車いすを動かすためにハンドリムをひたすら操作したことがわかります。5は明らかに正しいですね。③
問2 「装着」の読み。①
問3 「考」と同じ画数を選ぶ問題。それぞれの選択肢の漢字が分かるかで決まります。それ以前に、「考」が7画だと思っていたらアウトですね。②
問4 「兼用」の対義語を抜き出す問題。考えて書くのではなく、抜き出して書く問題なので余裕で解けます。①
問5 「点画の省略」が表れている部首を選ぶ問題。単純に、省略されているものを選べばよいので簡単です。①
大問3 古典:漢文とそれを題材にした古文・現代語訳を読んで答える問題。文章が3つもあって焦ったでしょうか?
問1 「飲みをはりて」を現代仮名遣いに直す問題。「を」に気をとられて、「は」はそのままにしてしまった子もいるようです。①
問2 漢文に返り点をつける問題。①
問3 「煩はし」と同じ意味で用いられている語を、古文中から抜き出す問題。古文の最後の方を必死に探した受験生もいたでしょうが、内容としては真ん中の段落にあたります。現代語訳を頼りに判断すれば確実に選べるでしょう。③
問4 「心のうち涼し」がどういうことかを選ぶ問題。「涼し=すがすがしい、さわやかだ」を知らないでしょうから、文脈で判断します。許由は自らの意思で瓢箪を捨て、手で水を飲んでおり、作者(兼好法師)も名誉や利益を欲しがらない許由の態度を立派だと評価していることが手掛かりです。③
問5 会話文中の空欄に適切な言葉を入れる問題。
アには「つつましく、ぜいたくをしない」、イには「俗世間の名誉や利益を欲しがらない」という内容の語句を入れます。②
ウは、直前の「そのような人物について、」とのつながりから考えて、「日本の人は語り伝えない」という内容を入れます。「について」の部分がカギですね。④
大問4 作文:2枚のポスターからよいと思う方を選び、それについて作文します。数年前に選挙ポスターについての作文がありましたね。第一段落では、AとBのそれぞれのよさを述べなければならないのがポイントです。Aであれば「物語のあらすじの一部がかかれており、続きが見たくなる」「絵が大きく描かれており、注目を集めやすい」、Bであれば「「狂言の体験でござる」というフレーズが面白い」「クイズがあることで、狂言への興味が湧く」などが考えられるでしょうか。第二段落は、さらに工夫できることを述べます。改善案を述べるのは初めてのパターンですね。Aであれば「「あおげ、あおぐぞ」というセリフがおもしろいので、セリフ部分の文字を大きくする」「絵だと狂言の迫力が伝わらないので、写真を用いる」、Bであれば「「附子」の内容があまり伝わらないので、クイズを減らして、ストーリーをのせる」「しぐさに関する問題は、文字だけだと分かりにくいので、その場面の写真や絵を用いる」などでしょう。過去問にきちんと取り組んだ子は、そう難しくは感じなかったことでしょう。③
平均点は昨年とほぼ変わらないのではないかと思います。漢字・語句・文法など、知識を問う問題もバランスを考えて出題されています。福岡県は韻文の出題が滅多にありませんので、個人的には、今年あたり出てくるのではないかと予想していましたが、この予想は来年に持ち越しですね。