授業時間が残ったときは、その日の宿題をする時間に充てることがあります。そして、授業の終了時間が来ると、「切りのいいところで終わろう」と声をかけます。ここでの生徒の行動は2つに分かれます。「それまでやっていた問題を残して、そそくさと帰宅準備を進める」か「今やっている問題(あるいは大問)まで終えてから帰宅準備を始める」かです。前者は、やはり勉強が苦手な子(できない子)に多い行動です。問題を最後まで解くことに対する執念もなければ、正解かどうかにも興味がない。短い時間で簡単に終わることを後回しにすることで、将来の自分に余計な手間をかけてしまう。こういう子の場合、勉強を教える以前に、「丁寧にやりましょう」「雑にしてはいけない」という話から始めることになります(とはいっても、現実にはほぼすべての中学生にこのような話をしていきます。それを受けて改善するまでにどのくらい時間がかかるのかというところに大きな差が生まれます。すぐに理解し、行動に移すことができる子もいれば、1年以上経っても同じことの繰り返しになってしまう子もいます。こういう子の場合、途中退塾することが多いです)。
ある生徒Aくんは、毎回の授業でも、定期考査対策でも、「切りのいいとこで終わりましょう」と言うと、目の前の問題を残して、そそくさと片づけを開始する子でした。それが、ここ最近(5月の授業)では、今やっている問題までは解いて帰宅準備を始めるようになっているのです。ほんのちょっとした変化ですが、学力を上げるという観点からすると、大きな変化です。大きな成長だともいえるでしょう。その変化をもたらした要因はいくつか考えられますが、最大の要因は「問題を解けるだけの実力が付いてきた」ということだと思われます。目の前の問題に自信がなければ、解きたいとは思いません。実力が足りないと、「面倒くさいから家で解こう」「もう疲れたから明日やろう」という思考に陥りやすくなります。中途半端にすることに違和感も、罪悪感も、後ろめたさも感じないというのは、勉強ができない子の共通点です。ところが、徐々に実力をつけ始め、「やれば解けるはず」「考えれば解けるはず」と思えるようになれば、目の前の問題を中途半端に残すことが嫌になります。残すのが嫌というよりも、中途半端に残ったものをあとから再開するのが面倒になると言うべきかもしれません。「やればできるんだから、ちょっとだけ残って解いて帰ろう」となるのです。問題を解く実力も自信もなかったときは、最後まで解くことにストレスを感じていたのに、実力とともに自信を身に付けていくと、中途半端に残すことに大きなストレスを感じます。中2では連立方程式の解法を一通り扱いました。一通り乗り切って、「連立方程式って、面倒だけどやればできるじゃん」と思えるようになっているはずです。「解ける」「できる」というものがなければ、勉強は大変つまらないものになるでしょう。ですから、塾生には全員「解ける」「できる」と思っていてもらいたいですし、もしそうなっていないのであれば、時間をかけて努力し「できる」ようになってもらいます。