数学の入試でぜひとも出題してほしいものがあります。それは「連立方程式」です。ここ2年間、連立方程式は関数に組み込まれ(それも申し訳程度に)、3年前までの連立方程式の大問は消えてしまいました。連立方程式(に限らず方程式すべて)は、受験生の解答までのプロセスや思考を試すのに最適だと思うのです。関数の記述解答で連立方程式の理解を試すというのはあまりにも残念です。あんなものは連立方程式を解いたうちには入りません(それに関数の記述はどの塾も対策が進んで、点数がとりやすくなっているはずです)。数あてゲームや文字を使った証明もいいですが、それよりも個人的にはぜひ連立方程式の大問を心待ちにしています。出してくれないと、連立方程式の勉強が疎かになるじゃないですか。あさっての入試で連立方程式の大問が復活することを願っています(そうでなくとも数学の大問2は、一昨年に資料の活用、昨年に確立が出題され、そろそろ連立方程式が出そうな気がしています)。
さて、いよいよ公立高校入試が明日になりました。
たった15歳の子どもが自分の人生を左右する高校入試の最後の戦いにたった一人で挑みます。当然、不安、後悔、恐怖などさまざまな感情が渦巻いていることでしょう。それらを一身に背負って戦ってきます。
試験会場に入り、まわりを見わたせばそこにはライバルしかいません。どのライバルも今いる高校に入る気でいます。そのために努力をしてきたのですから。ほかの受験生よりも一点でも多くとって何とか合格を手に入れようと必死なはずです。そんな独特の緊張感の中、きっと普段よりも冷静さを欠くでしょう。普段よりも周りが見えなくなるでしょう。当然プレッシャーもあるでしょう。それでも、3月10日にそれを味わうことができるのは君たちしかいません。自分の人生の分岐点にいるという、限られた人間だけしか味わうことができない状況を全身で受け止めて、そして楽しんできてください。
受験前には「15歳で高校受験を迎えること」の意味を考えさせられます。たった15歳の子どもが自分の実力や可能性と向き合い、自分自身で道を開拓していきます。これまでの道のりは決していいときばかりではなかったはずです。うまくいかないとき、逃げ出したとき、自分を情けなく思えたとき、不安でどうしようもなくなったとき、孤独を感じたとき、これまでの歩みを後悔したとき、不合格がよぎって怖くなったとき…。長く険しい受験勉強なのですから、さまざまな困難があったことでしょう。そんな受験勉強の先には、これまでの15年とは大きく異なる世界が待っています。これからは自分の進むべき道を自分で決めることができるのです。決められたレールから外れることができず、まわりと同じペースで、同じ方向に進まなければならないのはもう終わりです。しかし、進みたい道を希望すればだれでも選べるわけではありません。道を選びたければそれなりの実力や能力を身につけなければなりません。そのためには学びを怠ってはいけません。学びを止めたその瞬間に簡単に脱落していきます。高校受験まで必死に勉強してきた子が高校に入って勉強に手を抜き出すと、あっというまに下位層に沈んでしまうのは必然です。学びのないところに成長はないのです。
高校受験という戦いは、義務教育を卒業し、自分の道を歩きはじめる「自立」への最初の一歩です。この先は、自分の人生を自分の力で開拓していく日々が待っています。この「自立」の瞬間に立ち会えることができて私は本当に幸せです。
とりわけ今年はすべての受験生にとって難しい戦いを強いられました。勉強がどうなるのか、受験がどうなるのか、あるいは健康を維持したまま受験を迎えることができるのかなど、何かしらの動揺や先の見えない不安があったことでしょう。でも後から振り返れば、例年以上にワクワク、ドキドキする受験勉強を経験できたのは貴重な経験となるはずです。日本中がざわざわしているときに、冷静に勉強しようとした自分自身が誇らしく思えるはずです。君たちは、例年の受験生以上に成長できたのです。
保護者の皆様、明日は落ち着かない一日となります。いや、すでに普段とは違う緊張感を感じていることでしょう。そしてその緊張は合格発表の日まで続いていきます。子どもたちは言葉には出しませんが、お父さんやお母さんのために合格したいと心では思っています。自分以外の誰かのために合格したいと思えたから、ここまで頑張ってこられたのです。子どもたちは普段とは違う緊張感を感じていますが、保護者の皆様はいつも通りのふるまいで構いません。何も特別なことをする必要はありません。明日のためにいつものようにおいしいお弁当を作ってあげてください。明日試験会場に向かう子どもを、「気をつけてね。頑張ってきてね。」といつものようにやさしく明るく送り出してあげてください。「頑張って」と言われなくとも子どもたちは頑張りますが、親からの「頑張って」を意気に感じ、自信をもって会場に向かうはずです。
受験生の皆さん、周りの受験生や雰囲気に負けることなく、強い気持ちで戦ってきてください。英語の試験が終わるその瞬間まで戦い抜いてください。「諦めたらそこで終わり」というのはドラマや漫画の中だけではありません。入試という勝負の場でも油断や諦めは命とりです。模試の判定はあくまでも合格予想です。予想なんて簡単に裏返ります。ずっとA判定だったら必ず合格できるとは限りません。D判定やE判定を取ったことも全く関係ありません。すべては明日の出来次第です。ですから朝起きてから、高校に向かうまでの間も、試験の合間もすべて無駄にせず、粘り強く戦ってください。
君たちの健闘を祈ります。