勉強ができる、だけがすべてではありません。勉強ができなくても社会に出て一人前に活躍している人もいます。それでもやはり、勉強できることで得られるメリットや、「学歴がある」ということに対する社会的評価は大きいのが事実です。ですから、学習塾という場所は、貴重なお金をいただいている以上、子どもたちの学力向上には妥協してはいけないと思うのです。
勉強は非常に惨酷です。できる子とできない子、賢い子とそうでない子、希望の高校に進学できる子とそうでない子を明確に分けてしまいます。たった12個の英単語のテストで、すべて書くことができる生徒がいる一方、1つも正解することができない中2の新入塾生がいます。中2ですから、約2年間英語を勉強し、なおかつこの子は1年間個別指導塾に通っているにもかかわらず、12個のうちのたった1個も書くことができないのです。中学校での2年間、個別指導塾での1年間、この子は覚えるべきことから逃げ続け、勉強を適当に済ませてきたことが想像に難くありません(初対面の時のあいさつのしかたや受け答えから、学ぶこと意識が低いことは手に取るようにわかります)。また、本人の努力不足だけでなく、まわりの大人が「勉強ができない」という現実に対して必要な処置を施さなかったことも、状況を悪化させた一因であります。1年間塾に通って、文章もまともに読めない、計算もできない、英語も書けない、理科も社会もボロボロなんて、飼い殺しと言わずに何と表現すればいいでしょうか。もしかすると、塾に通っていなければもっと悲惨な状況になっていたのかもしれませんが、塾に通った期間と現状の学力を考えると、ただお金だけを支払い続けてたといわざるを得ません。お金を支払い続けたにもかかわらず、学力的・精神的な成長をほとんどしていない、というのが現実なのです。これだけ学習塾が乱立しているのですから、「塾に通えば成績は上がるものだ」などという安易な考えは捨てたほうがいいのかもしれません。
「子どもをどこの塾に通わせるのか」「いつから塾に通わせるべきか」「塾に通って結果が出ないときに、塾を続けるべきか転塾させるべきかの判断を冷静に下すことができるか」などということは、親が責任をもって考えるべきことです。塾選び次第で、その後の学力の伸びは大きく変わります。英単語を覚えなければならない塾もあれば、覚えなくてもいい塾もあります。漢字を書けなくてもいい塾もあれば、それではダメだという塾もあります。子どもの立場からすると、覚えなくてもいい、書けなくてもいいという方が楽のは確かですが、本当にそれでいいのでしょうか。塾選びでは、授業料や通塾日はもちろん見るでしょうが、それ以上に中身(つまり、どのように学力を伸ばそうとしているのか)を見ておかなければ、「塾に入ったけれど伸びない」という最悪の結果を招くことになります。そして、もし、そのような最悪の状況になってしまった場合、塾を辞めるかどうかの判断を下すのも親の責任です。子どもは、成績が上がっていなくても、今の状況に落ち着いているのであれば、塾を変えようとしません。塾を変えたら変えたで面倒くさいですし、宿題や授業時間が増えるかもしれないからです。「成績は上がっていないけれど、現状を変えず、波風立てずにやっていくほうがいい」となってしまうのです。ここで親の出番です。成績が上がっていないのだからと見切りをつけることができるのか、子どもが塾を辞めたがっているわけではないからと通塾を継続させるのか…。どちらがいいのかということは一概には言えません。しかし、1つ言えることは、子どもを塾に入れたあとに子どもの学力に無関心になってはいけないということです。言い換えれば、塾に入るまでが親の役割ではないということです。
先ほども書いたように、「塾に通えば成績は上がるものだ」という考えは捨てましょう。通ってもなかなか成績が上がらない塾があるのが現実です。塾を選ぶみなさんの想像以上に、どの塾を選ぶかによって、学力の伸びは変わります。これから新年度にかけて塾選びをされる方、転塾を考えられている方がいらっしゃるでしょう。わざわざお金を出して塾に通うのですから、塾選びにはとことんこだわってください。「塾選びが上手くいった」といえる塾選びを目指してください。