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※昨日、中3のキャンセルが1名出ましたので、あと1名のみ受け入れ可能です。お早めにお問い合わせください。
昨日の中1授業で扱った文章では、以下のような箇所がありました。
「雅彦にとって永遠に忘れられない事件が起こったのは、ちょうど七歳の誕生会の日のことであった。(中略) 実はこの日、初めての誕生会に有頂天の雅彦が最も期待していたのは祖母のプレゼントだった。(中略) 雅彦は夜、眠れないほど考えたが想像もつかなかった。」
さて、このあと雅彦君は期待通りの嬉しいプレゼントがもらえるでしょうか?期待通りのプレゼントに満足する場面が描かれるでしょうか?もちろんその答えはNOです。少なくとも、高校入試の小説文において、何の展開もない、何の波もない問題は出ません。「プレゼントに期待していた」→「プレゼントをもらって喜ぶ」という普通の展開のどこで問題をつくることができますか。たとえ問題をつくれたとしても、そんなものであれば誰でも正解できます。差をつけるための入試で、差をつけることができない問題を出すはずありません。ですから文章の中にはどこかしら「切り替わるポイント、きっかけ」があります。昨日の文章でいうと、「プレゼントに期待していた」というわくわくが、「プレゼントはおにぎりだった」と分かった途端、悲しみへと変化します。文章読解においては、このような変化や新たな展開を決して見逃してはいけません。何かが変化するには理由があります。文章読解(特に小説読解)では、このような因果関係の読み取りを試されているのです。
ただし、読解に慣れた生徒であれば、「初めての誕生会に有頂天の雅彦が最も期待していたのは祖母のプレゼントだった。」と書かれている段階で、その期待は裏切られる、つまりプラスの感情(嬉しい、楽しい、わくわく、達成など)だった雅彦がマイナスの感情(がっかり、怒り、できないなど)に変化することは分かるはずです。いわゆる伏線というものを拾って、この先のおおよその展開を把握したうえで読み進めていきます。そうすることで、「何が原因でマイナスの感情になるのか」という核の部分に集中することができるのです。入試は時間制約がある勝負ですので、ポイントを外すことなく読んでいくことは必須の能力だといえるでしょう。
では、次の文を見て、文章の展開を考えてみましょう。
「「俺」は、小学校のころ熱中していた駅伝を、試合前のけががもとでやめた。中学三年生になった今は、何に対しても投げやりな態度で、不良グループからも浮いている。そんな「俺」を、桝井は熱心に駅伝の練習にさそっていた。」
これは本文ではなく、その前に書かれてある「リード文」とよばれるものです。「リード文」をきちんと読まずに、いきなり本文から読んでいく子もいますが、それはあまりにももったいないですし、ダメなやり方です。なぜなら、「リード文」には、物語の展開上、必要な情報が書かれているからです。このリード文の場合、「俺は何に対しても投げやりな態度」という部分は見逃すわけにはいきません。つまり、はじめはマイナスの心情・態度なのですから、いつかはプラスに変わっていくのではないかという考察ができるのです。また、「桝井が熱心に駅伝の練習にさそっていた」とあることから、「桝井」や「駅伝の練習」がきっかけ(原因)となって心情が変化していくことも予想できます。
説明的文章では、「現在」と「過去」の比較が見られます。
「生きものとつきあうことを無駄な時間だと決めつける近代化精神が浸透してくると、百姓仕事や百姓ぐらしの本意は伝わらなくなります。(中略) 現代の主流である経済価値で語るのではなく、そんなものは軽視して、もっと深い情愛や情念を表現してみてください。(中略) かつて百姓仕事や百姓ぐらしの中に濃密にあった生きものとの「交感」を少しでも取り戻せないかと思ったのです。」
筆者は、近代化以前と近代化以降のどちらの姿を良しとしているかお分かりでしょうか?もちろん近代化以前、つまりかつての姿を支持しています。一方、近代化以降、つまり現代は批判的に語っています。このように「現在」と「過去」を比較することで自分の考えに説得力をもたせているのです。「かつては…」と見た瞬間に、「現在は…」が来ると予想することができます。これも伏線回収の一つです(ちなみに英語長文でもonce(かつて)やnow(今は)というのが比較のキーワードになります)。「筆者はかつての姿を支持している」と分かってしまえば、途中で文章を見失う心配はありません。なぜなら、筆者の考えは一本の筋が通っているのが普通であり、結論はそう簡単に揺らぐことがないからです。
「あなたの番です」というドラマが話題で、You Tubeには考察動画も数多くアップされています。本編には犯人へとつながりそうな伏線がいくつもちりばめられていますが、まだ菜奈ちゃんを殺した真犯人にはたどり着くことはできません。それに比べて、国語の伏線回収はすごーく簡単です。「心情は何かのきっかけで変化するもの」「筆者は何かと比較して自分の意見を強調するもの」と意識しておけば、キーワードに容易く気づくことができます。文章は読み方一つでよい方向にも悪い方向にも転がっていくのです。