勉強が嫌いな子がよく言う言葉があります。それは「勉強の仕方が分からない」というものです。「定期テスト勉強の仕方が分かりません」と言われたので、「じゃあ、学校のワークは覚えたの?何回やったの?どのぐらい勉強したの?」などと聞くと、「ワークはあんまり覚えていません。回数もあまりやっていません。勉強時間も…」などと返ってくることは決して珍しいことではありません。そもそも勉強の仕方が分からないのではなく、楽して成績を上げたいだけなのです。成績が上がらない根深い原因があるにもかかわらず、「勉強の仕方が分からない」という言い訳にもならない言い訳を盾に、勉強することから目を背けているのです。卓球の水谷隼選手がツイッターでこのようなことを発信しています。
「どうやったら卓球強くなりますか?この技術はどうやったら上手くなりますか?◯◯はどうやったらできるようになりますか?」って人生で1番質問されてる俺の嫌いなワードですから答えます。「1万時間練習してから質問しに来てください」 近道なんてない 。
大事なのは方程式の解き方、その答えに至るまでのプロセスであって数学の問題の答えだけ分かっても意味がないのと同じ。
確かに、自分で何も考えず、行動せず、ただ単に答えだけを求めたところで、そもそも行動する気のない人間には答えの価値など分からないでしょう。やる気が出ないから誰かにやる気を出してもらおう、調べるのが面倒だから誰かに教えてもらおう、自分がやらなくても誰かがやってくれるだろうなんて受動的なやり方ではいけません。誰もやる気を出してくれなかったらどうするのでしょうか。やる気がないときは何もしないのでしょうか。自分で答えを見つけることができずに大人になっていくのでしょうか。常にだれかがいないと何もできないのでしょうか。誰かから強制されなければ自分の行動を制御できないのでしょうか。定期考査でも受験でも、たった一人で挑まなければなりません。精神的な未熟さは大きく学力を引っぱるのです。大人になればなるほど、簡単には答えが見つからない問題に直面することになります。小中学生は来るべきときに備えて、問題解決の練習をしているのです。ある方法でうまくいかないときに、そのやり方の問題点を精査し、新たな解決策を模索するという訓練をするのが子どもたちに与えられた課題です。これからの時代は、予め与えられたことを機械的にこなすだけの作業は、機械がやることになるのです。「やり方が…」なんて言い訳ばかりして動こうとしないのはいけません。まずは目の前にある計算問題や文章問題を解くことです。覚えるべきことは繰り返し覚えることです。1回で文章が理解できないならば、2回、3回と読むことです。やりもしないのにできないなんておかしな話ですし、たった1回で理解しようなんて虫が良すぎます。何かを上達しようと思えば、それなりの時間と労力が必要なのは当たり前です。そんなこと部活動をやっていれば分かっているはずなのに、なぜが勉強だけは最小限の時間と労力で最大限の結果を求めようとします。学力はそう簡単には向上しません。時間をかけて育むべきものです。ましてや「中3の夏からで大丈夫」など無責任極まりありませんし、そうして身につけた学力は底が浅いものにしかなりません。
とはいっても、学習塾の授業の中では、効率のよい勉強法や考え方を話します。簡単な例だと、中2理科で学習する「炭酸水素ナトリウムの熱分解」において、炭酸水素ナトリウムと炭酸ナトリウムの比較を行うのですが、多くの中学生が両方の性質を覚えようとします。両方をいっぺんに覚えようとするがゆえに、どちらが水によく溶けるのか、どちらがフェノールフタレイン液を濃い赤にするのかが混乱してしまうのです。確かに、どちらの性質も覚えるに越したことはありませんが、すべてを覚えようというやり方はいけません。特に似ているものを両方覚えようとすると、「どっちだったっけ?」となってしまう危険が生まれるのです。似ているものは片方を覚えます。すごく単純なことですが、中下位層の生徒はそんなことを考えず、全部を覚えようとします。反対に上位層は、「片方覚えれば、もう片方はその逆じゃん」と単純化していきます。先の例でいうと、熱分解後の炭酸ナトリウムの方がよく溶けるし、濃い赤になる、つまり炭酸ナトリウムの方が大きく変化するということだけを覚えておけばいいのです。ちょっとしたことですが、暗記をする上では大事な考え方であり、強弱をつけて勉強することで、暗記量は半減とまではいかなくとも2割減ほどにはなってきます。「勉強の仕方が分からない」に対する明確な答えはありませんが、少なくとも授業の中には解決につながるヒントがいくつも転がっています。