今に始まったことではありませんが、とくに最近は塾生の問題を解くスピードの遅さに危機感を抱いています。どうもマイペースで解いている場面が目立つのです。問題を解くスピードが遅いのは大きく3つの原因が考えられます。
一つ目は知識が足りないためです。中3生の社会の授業では、予め入試の過去問を解いてきてもらい、それを解説するのですが、たった1年分の入試を解くだけでもかなりの時間がかかっています。問題を解こうにも国名が分からない、都道府県の場所が分からない、人名が分からない、法令が分からないなど覚えていない基本事項だらけなので、サクサク解いていくことができないのです。理科は電流の単元を扱っているのですが、中2のときにやったことをすでに忘れていたり、そもそも中2でサボっていたりすれば、他の生徒よりも予習に何倍もの時間がかかります。問題を解くための知識がないので、分からないときにいちいち教科書などに戻らなければならないので当然です。素早く問題を解きたい、予習を短時間で終えたいと思うのであれば、日々知識を蓄積させることです。10月に電流を扱って、また1か月後に電流を扱います。今やっている知識をきちんと次につなげることがスピードを上げる方法です。覚えて、忘れて、また覚えてというやり方はエコではありません。一度やったことは何としても身につける、この意識が大切であり、この意識がなければ合格までの道のりがより長く険しいものとなるでしょう。
二つ目は経験不足です。経験、あるいは演習量が足りないので時間がかかるということです。例えば数学の解の公式はやり方を覚えて終わりというものではありません。やり方を覚えるのは問題を解くためのスタートラインに立ったにすぎず、そこから演習をこなすことが力をつける方法です。初めは公式通り数字を代入して解きますし、どこに何の数字を入れるか不安定ですので、どうしても時間がかかります。そこから20問~30問の問題をこなせば、不安定さは消えていき、シャーペンの動きが静止することなくスラスラ計算できます。またさらに演習を積めば、ルートの中を暗算で計算できるようになるなど最小限の手数で解いていけます。英文の訳ができないのも、単語や文法の知識がないというよりも、英文を訳してみる、あるいは訳しながら解くという経験が欠如しているからです。定期考査で点が取れれば入試で点が取れると思われている方もいますが、入試と定期考査は問題のレベル・質が全く違います。入試で点を取るには、入試レベルの問題を解く経験を積み、そこで点数が取れなければならないのです。ちなみに、模試で偏差値50を切るような生徒であっても、定期考査では400点以上の点数が当然のようにとれます。入試において定期考査の点数はあてにならないということです。
三つ目が一番重要です。それは、問題解くときの勢いです。勉強のできる子は、1年分の入試問題を解くときにほとんど問題から目を離しませんし、シャーペンを離しませんし、腕組みをしたり、姿勢を変えることがありません。常に問題文をシャーペンの先で追い、文章はぶつぶつ口に出しながら読み、下書きや筆算をいちいち消しゴムで消すことはありません。剣道の試合中に竹刀を置くことがないように、柔道の試合中に観客席を眺めることがないように、テニスの試合中にあくびをすることがないように、勉強ができる子は目の前の問題を解くことだけに集中し、いかに正確に、素早く解こうかということしか頭にありません。逆に成績が伸びない子は、入試問題を解いている最中であっても、あたりをきょろきょろ見回し、ペンを置き、腕組みをしてただ文章を読んでいます。自分のペースでと言えば聞こえはいいですが、合格を目指すやり方という意味では、時間を意識しない典型的なダメなやり方です。問題を解く間はその問題だけに集中しましょう。ダラダラ解くのは時間の無駄です。
一般的に中3生は受験生と言われます。その受験生にも、形だけの受験生と本物の受験生がいます。塾生はまだまだ本物にはなり切れていません。受験に通用する単元の考え方、問題の解き方、そして勉強態度が甘いです。「疲れたから今日だけは楽をしよう」と判断するのは簡単です。特別ではない単なる一日なのですから、いくらでも無難に過ごすことはできます。しかし、決して普通の一日を無駄にしてはいけません。今の成績を作り上げたのも、これからの成績を作り上げるのも、そのたった一日一日の積み重ねなのですから。