夏休みがはじまると、各学校で「三者面談」というものが行われます。中3であれば学校の先生から勉強のこと、塾のこと、志望校のことなど聞かれるでしょう(場合によっては先生が一方的に話す場合もありますが…)。志望校を設定するということは、これからどれぐらい勉強するつもりなのかという宣言であると思っています。もし現時点の模試で偏差値60を確保できている子が、志望校を香椎高校に設定したところで、それは「私は受験勉強を頑張るつもりはありません」と言っているようなものです。もちろん香椎高校にどうしても行きたいという場合は別ですが、大したこだわりがないのであればそれは非常に消極的です。残念ながら偏差値50の子を偏差値50の高校に合格させるのは塾の仕事ではありません。偏差値50の子を偏差値55の高校に合格させるのが塾の仕事です。ならば今の段階では遠慮せずに「高い目標」を設定しておいてください。福岡高校でも、香住丘高校でも、新宮でも香椎でも魁誠でも須恵でもどこの高校でも構いませんので、自分よりも高いレベルの高校を設定しておいてください。ただし設定するからにはそれなりの努力をしなければなりません。目標を設定してみたものの、その覚悟を持たないのであれば、塾に通うべきではありません。「啐啄同時(そったくどうじ)」という言葉をご存知でしょうか。鳥の雛が卵から産まれ出ようとするとき、殻の中から卵の殻をつついて音を立てることを「啐」と言い、そのとき同時に親鳥が外から殻をついばんで破ることを「啄」と言います。この「啐」と「啄」が同時になってはじめて、殻が破れて雛が産まれるのがこの言葉の意味で、そこから派生して「何かをするのには絶好のタイミングがある」という意味として用いられます。塾に置き換えて考えると、指導者があれやこれやと手を尽くしているのに、生徒が努力しなかったり、逆に生徒は腹をくくって努力する気があるのに、指導者が怠けたりしていては、大きな成果は生まれません。「生徒の努力」と「指導者の尽力」があって初めて、今のレベルよりも高い高校に合格することができるのです。これから公立高校受験まで8か月以上もあります。その期間すべてがうまくいくはずがありません。落ち込むとき、やる気の出ないとき、勉強が嫌になるとき、弱気になるときなど、消極的になることもあるでしょう。しかしそんなときでも歩き続けるために必要なものが「目標をもつこと」なのです。高い目標があるから勉強を続けることができます。勉強にやる気が出ないなら、さっさと目標を設定してしまいましょう。各高校のホームページを見たり、制服を見たり、偏差値を調べたり、実際に高校を見に行ったりして、「1年後、この高校に通っている自分自身」というものを想像してみるのです。それは地味ですが大きなモチベーションとなって、受験勉強を支えてくれるはずです。
青凜館では生徒の志望校決定にほとんど関わりません。もちろん生徒の得手不得手を最も分かっており、これからの残り時間でどれくらい伸びるだろうかということを予測できますので、その上で「この高校は十分合格可能である」とか「この高校はまず無理です」というのは言います。しかしこちらから「この高校を受験したほうがいいよ」などと進めることはありません。何十人、何百人という合格実績を出すために、トップ校、準トップ校の受験を進めるような大手塾のやり方ではないということです(「トップ校に合格する可能性がある子には何としてでもトップ校受験をさせる」というのは塾業界では当然に行われています)。子どもたちにとって、「小学校→中学校→高校」という一連の流れを当たり前だと感じているでしょうが、中学校と高校の間には大きな大きな壁があります。それは勉強することが義務であるか否かです。義務化された環境というものは、やるべきことが明確化されシステム化されているので、路頭に迷うことがありません。その一方、型にはまる必要がありますのでどうしても自由というのが奪われます。中学を卒業すると大きな自由が与えられます。それは勉強をするかしないか選ぶことができる自由です。勉強をしたくない、あるいはその必要性を感じないのであれば高校へ行かなくてもだれからも文句を言われる筋合いはありません(身内からの文句はあるでしょう)。また勉強する道を選んでも、学区の制限はありますがどの高校に進むのかは自由です。中学校のように、絶対にこの中学校に行かないといけないと決められているわけではありません。偏差値70の子が、底辺の高校に行ってもいいのです。しかし自由は何も良いことばかりではありません。自由には必ず「責任」が付きまといます。責任をもつ覚悟がなければ自由な環境に行くべきではありません。ですから高校を選ぶという大事なときに、「高校を誰かに決めてもらおう」とか「塾の先生からここを受けなさいと言われたから」などという無責任なことをしてはいけません。15歳の頭できちんと考えて、どの高校を受験するのかを決めるべきなのです。子ども自身の人生を生きていくのはほかでもなく子ども自身なのですから。それゆえ、青凜館では受験校の決定は生徒本人、あるいはご家庭の考えを尊重します。志望校が現状の実力からみて高すぎであっても、低すぎであっても、それが生徒自身の意思ならば、それに向かって必要な指導を施すのが塾の役割なのです。