2024年10月9日
  • 須恵町にある高校受験専門学習塾

2018福岡県公立高校入試分析②(社会編)

第2弾は数学ではなく社会です。文系科目は分析に時間がかかるので、まずは社会から終わらせます。一昔前の入試社会は中学生でも20分あれば解けてしまうようなもので、トップ校を受験する子は満点とって当たり前のようなところがありましたが、ゆとり教育が終わってからは非常に時間制約の大きい科目となりました。一問一答形式の要領で解答できるものは少なく、グラフ・地図・会話などをしっかり読み取って、求められていることに適合する形で解答しなければなりません。

 

大問数はこれまでと同じく6題で、大問1・2が歴史、大問3・4が地理、大問5・6が公民です。配点も各20点ずつですので、偏りなく勉強しておく必要があります。ただし、後でも述べますが、歴史や公民に比べ地理の難易度はやや高いので、地理に関しては他の都道府県の問題などにもチャレンジし、資料の読み取りに対するアプローチの仕方を身につけ、少しでも資料問題アレルギーをなくしておくべきでしょう。大問ごとに詳しく見ていきます。

(この分析はあくまでも個人的な分析なので、「そういう考えもあるな」ぐらいの気持ちでご覧ください)

 

【大問1:歴史】

昨年同様、古代から現代までを横断した問題でした。昨年はノーベル賞、今年は世界遺産をテーマにしています。来年は文学作品あたりですかね。問1~問3までは、超が付くほどの基本問題ですので落とすことはできないでしょう。公立高校に行くのならこのぐらいの問題を解けないと話にならないと言わんばかりのサービス問題です。問4も基本問題ですが、すべて江戸時代ですので混乱する可能性もあります(が、受験勉強したのならば解けて当たり前です。そもそも江戸時代の政治は混乱する中学生が多いので、どの塾も丁寧に指導しているはずです)。問5は出来事から年代を考え、選択肢から選ぶというもので、問題となっている出来事も、日清戦争、第一次世界大戦と最重要なものでした。問6の(ハ)は単なる語句説明ですが、石油のことだけを書いて石炭には触れなかった子がいるかもしれません。試験に出題されるグラフからは「変化」を読みとり、「こんな変化をしていますよ」と示すことが必要です。(ニ)は石油化学コンビナートとあるので、重工業ではなく重化学工業と書くべきです。(ホ)は常識と言えばそこまでですが、受験勉強をしてきたならばどこかで聞いた、見たことがあるでしょう。満点を取った子は多くいる大問で、逆に言うと、ここで落とすようなことがあると、トップ校は諦めてくださいというレベルの問題です。

 

【大問2:歴史】

同じく歴史ですが、「選挙制度」をテーマとした近現代史です。近現代史の中でも選挙資格などは徹底的に勉強してきたはずですので、それほど苦労はしなかったと思われます。問1は有権者の資格を述べる基本問題です。納税額は既出ですので、書かれていない性別と年齢を書けばよいと判断します。(イ)の第1回総選挙のときの有権者資格は意外に見落としがちかもしれません。(ロ)は問題なく正解するでしょう。問2は年代を選んだ並び変える問題ですが、すべて重要年代なのでそれほど苦労はありません。大問1の問4の並び替え問題も同様ですが、入試の年代並び替えには「大塩の乱」「サンフランシスコ平和条約」「日ソ共同宣言」などの事件名・出来事名は出ないと思ってください。ということはつまり、事件や出来事の内容を理解しておかなければ、解答できないということです。表面上の知識ではなく、より深い知識が必要なのですね。問3は「主権」「国民」というキーワードが与えられていますし、空欄の前に「それ以前と比べて」という言葉があるので、大日本帝国憲法との比較で解答ができるはずです。また公民でも日本国憲法、国民主権について勉強しますので、教科書通りの内容を書けば点数はもらえるところです。総合して、歴史は簡単ですので、これからは勉強のバランスを考えなければなりませんね(塾でも歴史に重きを置かれがちですが、地理、とりわけデータの読み取りに注力しなければなりません)。

 

【大問3:世界地理】

記述が多く、記号選択も簡単に選べるものではありません。問1は州同士の位置関係を認識しているかを問うています。初めての出題形式でしたが、オーストラリアが日本と経度が同じことから、Cのアジア州はすぐに選べるでしょう。問題形式にしては簡単すぎるなと感じていたら、問2以降が厄介になっていました。つまり、これから面倒くさい出題が続くから問1ぐらいは正解してくださいという優しさですね。問2は雨温図の問題ですが、そもそもあまり馴染みのない南アメリカ州と全解でなければならないということで、正解した人は少ないかもしれません。冷静に、③が熱帯だからa、①②は南半球だからb、cのいずれかになります。西側が少雨、東側が多雨は知っておくべきですが、知らなければワインとか銅とか水力発電とか知っている知識を組み合わせて解答してください。問3はキーワードを読み取れば簡単です。「ヒンドゥー教」「油やし」「北方の遊牧民」などがキーとなるでしょう。問4は解答欄が2行なので、いろいろ付け加えたほうがいいかなと思ったかもしれませんが、簡潔にポイントだけでいいようです。「ウ、エと比べた」とあるので、「ウ、エは輸出の中心が工業製品であるのに対して」などと答えたかもしれませんね。というよりもそう答えるほうが安全でしょう(事実、私もそのように書きました)。問5の結論部分、つまり「アメリカの農業は日本に比べて、大型の機械を使って、大規模な農地を耕作して、一人当たりの耕地面積は広く、生産量が多い」というような内容を答える問題はさんざん取り組んだはずです。結論は変わることはありません。「今年だけアメリカでは大型機械は使いません」などということは起こらないのです。問題と対峙する段階で、「これは農業の規模の違いについての問題だな」という心構えをしておくのと、そうでないのとでは、グラフや写真の理解のスピードが大きく変わってきます。日ごろの問題演習をその場限りの知識にするのではなく、広くつながりを持ったものにするためにも、復習は欠かせないのですね。

 

【大問4:日本地理】

大問3同様、記述も記号選択も即答できるものは少ないです。問1は日本の国土の範囲を知っていますかという問題です。もちろんちゃんと勉強して覚えているという人もいるでしょうが、そうでなくても北緯40度線は有名ですし、東京都がほぼ東経140度という知識から求めることもできます。また、大問3のCの地図から東経を推測することもできます。問2のaは北海道と南九州、北関東、岩手県への分布から畜産を選びます。関東地方に分布していますので野菜と間違えた人がいるかもしれませんが、岩手県や南九州などとは適さないことは明白です。bは北海道と東北地方なので米を選ぶというサービス問題ですね。北海道の出荷額の割合を選ばせる問題は良い問題ではないでしょうか。北海道は米の生産が多いからPとかSとかVを選んだ人がいるかもしれませんが、まさに術中にはまっているといえます。そもそも北海道は生産額自体が大きいので、米単体の割合で考えると、小さくなるのは当然です(数学の度数分布の問題でもありましたよね。母数が異なるとき、割合や相対度数で表すのが効果的だということです。金額のような「実数」と棒グラフのような「割合」を分けて考えることが必要です)。興味深いのは野菜の割合です。U以外はすべて20%前後で、違いがないのはなぜでしょうか。野菜は新鮮さが命で、作った野菜をその地域で消費するため、どの地域も野菜の生産を行います。そのため地域の割合に差が生まれません。逆に畜産はどこの地域でも盛んに行っているということではないので、地域間の差が生まれるのです。問3は記述ですが何のひねりもない基本問題です。問4も記述ですが単なる高冷地栽培についての基本問題です。問5は東京大都市圏の人口移動に関する問題で、設定は新しいものの、解答自体は既視感まみれの基本問題です。近畿地方で大阪府が大都市圏を形成しているのは常識です。大問4は記述が多いですが、答えの文自体は基本的なものばかりですので確実に正解しておきたいところです。

 

【大問5:公民】

テーマとして「働くことの意義」とありますが、労働に関するものだけでなく、公民分野全般からの出題となっています。問1はサービス問題です。中学生の皆さんも、将来いっぱい納税してくださいね。問2はよくある国会と地方議会に関する問題で、間違うことはないでしょう。問3もよくある刑事裁判と民事裁判の違いを問うもので、確実に正解できるところです。(ハ)が意外に落とし穴かもしれません。裁判員制度については、「刑事事件の第1審」ということがよく問われますが、「有罪・無罪を決め、有罪の場合は刑罰の内容を決める」という部分については、記号選択問題で選ばせる問題はありましたが、記述問題ではあまり見ません。公民を雑に勉強した子は、分からなかった、もしくは前半しか書けなかったかも知れませんね。問4こそ既視感とデジャヴ感にまみれた問題です。毎年の都道府県の入試問題を解いている身からすると、うんざりするほどの出題頻度の高さです。百歩譲って大企業と中小企業の比較問題だったとしても、これほどまでにグラフも出題方法も同じなんてどうなのと思ったりもします。問5も基本問題です。問6も基本問題です。拒否権についての記述も練習したことでしょう。概して、大問5はとても簡単です。トップ校、準トップ校であれば当然満点を取るべきです。問題を作る人たちも、公民は学習時間が少ないということを理解しているので、こんなに基本ばかりの出題なのでしょう。であれば、社会が苦手な子は確実に「公民」で点数を稼がなければならないのですね。

 

【大問6:公民】

例年通りの、資料を基に記述させる問題ですが、他の記述問題に比べ深く分析・思考する力が求められるためややてこずったと思われます。問1は初めて出てくるタイプの問題で、説明に必要な資料を選ぶというものでした。テーマが「社会保障費の不足」「少子高齢化」だと分かれば資料を選ぶのは難しくなかったでしょう。問2は図1が無くてもいいのかなと思います。解答の導入となる「家計が財やサービスを」と、Aから出た矢印の先にある「地元企業が、代金の一部などを」の部分もヒントです。ある種、国語で培った「論理」「因果」「相関」などの思考が必要なものです。経済が発展するためには「お金の流れ」がなければならないということですね。なかなか中学生は「お金」のことを知らないものです。せっかく公民の中で勉強するのですから、「お金」の価値だけでなく、「お金」の意味にも興味を持ってください。

 

昨年同様、地理が厄介な分、歴史・公民は容易に解けるものが多いため、平均点は昨年と同程度になるのではないでしょうか。地理は特段細かい知識が問われているわけではありません。単に他の分野に比べ資料を読み取ることを多く強いられているので、難しいというよりも面倒くさいといったほうが正しいかもしれません。これを「難しい」と思っているうちはまだまだ知識が不足していて、「面倒くさい」と思い始めてからが受験勉強の始まりだと思ってください。それにしても、大問3の問2(雨温図問題)と、大問4の問2(北海道の農業)は良問ですね。「これができたら合格できます」という入試問題らしく、学力の差をはっきりと分ける問題です。

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